展示バブルでミュージアムに勝機? 「マンガ文化で熊本を活性化」を目指す有識者が集結!

■地方ミュージアムに追い風? マンガの“展示バブル”

1408_sojo2.jpgシンポジウム「マンガ文化で熊本を活性化」の様子。

 こうした熊本県内のマンガによる活性化の事例を受けて、北九州市漫画ミュージアムの表さんは国内全体の背景に触れた。展示としては美術館など大規模なもの、デパートの催場など中規模なもの、マンガ家自身の企画など小規模なものに分けられるが、大規模なものとして08年の『井上雄彦 最後のマンガ展』や12年の『ワンピース展』などの成功にも現在の盛況が現れているとした。こうした空前の“展示バブル”に対し、美術館という箱に新聞社やテレビ局などのメディアの資金がつけば企画の余地が産まれることから、クママンの実現は追い風の中にあると展望する。

 また表さんは、先述の地の利など、北九州が持ってないものを熊本は持っていると、同県のポテンシャルの高さを羨んでいた。その上で現在も箱はあるのでそれらをどのように持続させるか、クママンが新設された場合は存在意義をどのように人々に実感させるかといった点も指摘。これには来客がマンガならなんでもかんでも好きなわけではなく、展示ごとに関心が散発的で固定層が掴めないといった事情が根底にあるためだ。施設を維持するためには来場者数という数字だけが頼みという不安要素が払拭できず、仮に閉館の話が出た場合、美術館や図書館のように声を上げてくれる人がいるのかどうかといった難しい現状も補足していた。

 これについて橋本さんは、箱は目標ではなく通過地点であり、廃棄処分になるのを次の世代に残す保存施設としての機能が第一と強調。そうしたアーカイブに加え、話し合える場としてのフォーラム機能も必要であると説いた。これにはジャンル別、世代別のタコツボ化を解消する狙いがあるという。

 そしてご当地に縛りがあるという行政との微妙な距離感には、松江さんはグランド12が地域に属してないことから、年齢の幅が広い集団で集まれる利点を挙げた。表さんは自身の施設の立ち位置が行政であることを例に、内向きの視点と外向きの視点を使い分けないといけないのが軋轢が生じる原因になっているとする。ちなみに管轄は北九州市が市民文化スポーツ局、湯前町が教育委員会。兼田さんは、自治体としては自分たちの町をPRしていきたいけど、観光課とのつながりもできてきたので、将来的には北九州市のようになっていくのかなと予想した。小川さんも熊本だからと特化するのではなく、日本全国を視野に入れないと熊本から出られないと応じた。ここでまた松江さんがファン目線で、行政が乗っかるとロクなことがないので後方支援でいいと言及しつつ、逆に湯前が上手くいってるところに民間がくるとダメかもしれないとの意見も出した。

■多少の出費もやむなし? 先人らの知恵も開陳

 質疑応答では、聴講していた明治大学国際日本学部の藤本由香里さんも発言した。藤本さんは同大で米沢嘉博記念図書館に続いて進めている東京国際マンガ図書館の完成を今年度中の予定としていたものの、オリンピックまでにはできるでしょうと笑いを誘っていた。また故・メビウスさんを京都精華大学と共同で招聘した際に、フランス大使館でのパーティにお金がかかりすぎて怒られたが、海外マンガフェスタで協力的になったから、回り回って戻ってくるといったエピソードを紹介していた(藤本さんと故・米澤さんも熊本出身である)。

 なお会場となった崇城大学の前身は熊本工業大学であるが、2000年より現行の名称となっている。また全国に4例あるパイロット養成コースの1つが同大学の工学部に設けられており、LCCの参入でパイロット不足のなか、航空業界から注目を集めてもいる。そんなユニークな大学におけるマンガ表現コースの新設が、今後どのような作用をもたらすか楽しみだ。
(取材・文/真狩祐志)

■「崇城大学」公式HP
http://www.sojo-u.ac.jp/

コミック くまモン

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熊本といえばこのキャラも…。

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