アニメ業界人が語る、ひそひそ秘話 【第2回】

小遣い稼ぎからリベンジ目的まで――アニメ業界の“素材流出・転売”の実態とは?

2014.08.21

――日夜アニメが放送・放映され、盛り上がりを見せるアニメ文化。そんな中、アニメに関する事件や風聞、ムーブメントが話題になることも数知れず。それでは、実際にアニメの“中の人”はそんな万物事象をどう見ているのか? アニメ業界に身を置く安康頂一(仮名)が、大きな声ではいえないあんなこと、こんなことをひそひそと語ります。

オークションサイトなどで「セル画」や「制作資料」などで検索すると大量の出品が確認できる。(モザイク処理は編集部によるもの)

「自分の原稿を落札しました。」(NAVERまとめ)【参照

  先月、イラストレーターの江森美沙樹さんが、自身の描いた生原稿をネットオークションで落札したことが話題になりました。流出元を特定するため出品者へ質問しても真相究明には至らなかったそうですが、ほかの出品物などから考えてファミリーソフト(過去に編集を外部委託されていた会社)が“怪しい”と、江森さんはツイッターに記しています。

 本来ならばコンテンツの作り手(制作・製作者)内部でしか受け渡しされないはずの素材が外部に流出し、古物商やネットオークションを通じて売買される……。出版の世界だけにとどまらず、アニメ業界にも存在している根深い問題です。現にネットオークションで検索をすれば、アニメの制作資料が山ほど出品されています。今回はそんな“素材流出・転売”の実態を、ギョーカイの隅っこに身を置く者として少し語らせてもらおうと思います。

■関係者を装ってスタジオに侵入!? かつてのゆる~い管理体制

 ひとくちに素材の流出といっても「内部犯か外部犯か」「昔か現在か」によって事情は変わってきます。

 ネットオークションで簡単に転売ができるようになる以前、昔から素材の持ち出しはありました。外部犯ならアニメスタジオから出るゴミをあさる者がいましたし、さらには関係者を装ってスタジオ内へ盗みに入る剛の者もいたようです。

 もちろん関係者による内部からの流出・転売があったことも否定できません。制作が完了した作品のコンテ・設定や動画、いわゆる「セル画」は基本的に廃棄対象とされていたため、管理がどうしても甘くなる傾向にありました。さすがに肉筆の素材は厳重に管理されますが、紙で配布される素材・資料はコピーばかりですから危機意識を持ちづらいのです。

 また、どこのアニメスタジオも自社制作作品のスケジュールや作業者(おもに動画、仕上げ)の手が一時的に空いている場合、他社の作業を積極的に受け入れるため、各社の制作進行がひっきりなしに出入りします。複数のアニメスタジオに自分用の机があって、かけもちで作業する原画マンも少なくありませんでした(これは現在も同じですが)。そんな事情から人の出入りのチェックが甘くなり、素材持ち出しを容易にする原因となっていました。

 こうして流出した素材は、古物商で販売されたりして、好事家たちの間だけで流通していたのです。

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