衝撃の病院CMから痛バイクまで!! 担当者に聞く!スタジオディーンがボーカロイドを生んだ理由【後編】

2014.08.19

――スタジオディーンが生み出したボーカロイド『蒼姫ラピス』と『メルリ』。今回のインタビュー前編(参照)では、同社のボーカロイド事業を担当している宮本逸雄さんに、スタジオディーンがボーカロイド事業を始めた理由やボーカロイド『蒼姫ラピス』『メルリ』の誕生秘話を伺った。後編では、病院からモータースポーツまで、活躍の場を広げる『蒼姫ラピス』『メルリ』の展開について話を聞いた。 前編はこちら

スタジオディーンが製作したボーカロイド『メルリ』
©i-style project

■ボーカロイドでCSRを 「神戸ルミナリエ」での合唱 ――前編では『蒼姫ラピス』を携帯電話にバンドルしようと営業を行ったという話でしたが、御社のボーカロイド事業は具体的にどういったことをされているのでしょうか? 宮本 ボーカロイドというのは、音楽や絵もそうだけども、色々な展開をされているのが面白いと思ったので、企画を起こしてあちこちに首を突っ込んでいきました。その中の一つとして、神戸の祭典「ルミナリエ」にボーカロイドを参加させています。  阪神大震災の復興歌となった「しあわせ運べるように」という曲がありまして。この曲が「神戸ルミナリエ」で歌われるんです。元は小学生が歌う合唱曲なんですが、「じゃあ、この曲をボーカロイドに歌わせたらどうだろう」ということで、ボーカロイドが歌う「しあわせ運べるように」をルミナリエの会場で上映しながら、音楽を聴いていただくといったことを、この2年くらいやってます。ボーカロイドに慣れ親しんでない世代にもアプローチがしたいんですよ。 ――今はともかく、2年前ならボーカロイドの声を街中で耳にする機会も少なかったでしょう。ボカロ曲は基本的にネットで聴けるもの、という印象でした。 宮本 (ボカロ曲は)せいぜい一部のコンビニで流れていた程度ですし、実際聴きやすい時代でもなかったと思います。自分としてはもう少し広いところ、メジャーなところでやりたいと思ってたので、そういうのもアリだよね、と。でも「ルミナリエ(の意味合い)」って…鎮魂なんですよね。最初に神戸のほうにプレゼンに上がって、「我々はボーカロイドで『しあわせ運べるように』をこの場所で聴いていただだきたい。できたらイベントとかも含めてやりたいです」と話をしました。そうしたら先方が、キャラの絵を見て「こんなのはダメだ!」って(苦笑)。なので、最終的にはルミナリエに合うような絵を起こしました。 ――「神戸ルミナリエ」専用にイラストを描き起こしたんですね? 宮本 どちらかというと絵本的な感じで、NHKの『みんなのうた』とかをやられてる西内としおさんという知り合いのアニメーション作家さんに描いていただきました。その絵を持っていったら、「これならいいでしょう」ということになって。『しあわせ運べるように』は、作詞・作曲をされた臼井真さんが同名の本を出していまして、西内さんはその本の表紙を描かれている方なんです。

VOCAROIDで 復興のシンボル曲 しあわせ運べるように を歌おう ページより。

宮本 このボーカロイド版「しあわせ運べるように」は、ほかの会社さんにもご協力をいただいて16人のボカロキャラクターが合唱するという曲になっています。 ――ボーカロイドの合唱曲なんですね。 宮本 でも本当は、ボーカロイドって合唱がすごく苦手という(笑) ――そうなんですか(笑)。 宮本 ……本当にその時は失敗したかなと思いましたね(笑)。知らないから出来るこの企画! みたいな。ヤマハの方に「今回こういうことをやろうと思ってるんですけど」と言ったら、「そうですか、いい企画ですね!」「ぼくもいい企画だと思ったんですよ!」「でも、ボーカロイドって合唱苦手なんですよね……」「(´・ω・`) 」 ――それは困った(笑)。 宮本 ボーカロイドはキャラクターごとにデータベースを作るので、発声するタイミングが必ずみんな一緒とは限らないんです。なので、各キャラごとに遅れたり、先行したりするとの話でした。 ――それを全部調整しないと、きれいには聴こえないということですか? 宮本 (合唱として)合わないんですよね。もちろん、キッチリ(16人のボーカロイドの発話タイミングを)合わせても気持ち悪い。楽譜もスコアもすでにある曲だから、曲の側でカバーできるものじゃない。そんな条件の中、曲を公募しまして、多くの方々にご協力をいただき、なんとか完成してルミナリエで流すことができました。一昨年と去年、それぞれ10日ずつ流しましたね。 ――毎年流しているんですね。今年も流れるのでしょうか? 宮本 「神戸ルミナリエ」が今年の冬で20周年なので、もし可能であればちょっと大きなことができたらいいなと思ってます。……でも「神戸ルミナリエ」に来る人は、リア充ばっかりなんですよ、リア充とおじいちゃん、おばあちゃん、みたいな(笑)。  弊社的に言うと、そういったCSR(企業の道義的責任)に近いことを、ボーカロイドを使ってコラボレーションして何か面白いことやろう、というのが基本スタイルになっています。

編集部オススメ記事

注目のインタビュー記事

人気記事ランキング