姫乃たまの耳の痛い話 第10回

“私より可愛くない子たちが評価されてた”ーー売れなかったアイドルたちの容姿へのプライドと空しい最後

 このままではいけないと思った彼女が、現状を変えるために挑戦したのが、超個性派アイドルオーデション“ミスiD”でした。持ち前のルックスで書類選考を通過した彼女は、その後のムービーテストで大きな壁にぶつかります。ひとりずつカメラの前で自己PRをする審査で、披露できる特技が思いつかなかったのです。ふと「こんな自分を映像に残したくない」と思っている自分に気がつき愕然としました。じゃあ、なんのために上京してきたんだろう。アイドルになりたい自分の夢ってなんだったんだろう……。

「周りの子たちは審査のためにいろいろ準備してたのに、私だけ何もできなかった」。一瞬悔しそうな顔をした後、「でも、私より可愛くない子たちが評価されてたー」と、アイドル志望のもうひとりの友人の前で笑ってみせました。

 結局「FRIDAY」(講談社)で発表されたセミファイナリストの中に、彼女の姿はありませんでした。肩を落としてひとり暮らしのアパートに帰ると、冷蔵庫が空っぽでした。家にある食材は実家から送られてきた野菜だけです。部屋の片隅に置かれたダンボールから茄子を取り出して油で炒めていたら、「なんかもういいかな」という気持ちになったそうです。

 実家に帰るまではどうするのかと聞くと、彼女は「メイド喫茶で働こうかなあ」と言っていました。「メイド喫茶でならアイドルになれるかも。時給も高いんですよね?」と彼女は笑っていました。うーん、いまから夏の終わりまでだと研修期間終わらないんじゃないかなあ。ちなみに多くのメイド喫茶の研修時給は、コンビニとあまり変わりません。でもこんな可愛い子がメイド喫茶にいたら嬉しいだろうなと思いました。

 彼女が会計のために席を経つと、友人がこっそり「メイド喫茶でもなんでも、アイドルがバイトとか、なんか格が下がる気がしません?」と耳打ちしてきました。うおお、こっちの子もなかなか性格がきつそうだ……。

 真っ白な原稿用紙と、氷が溶けて結露したグラスを見ながら、美しくてプライドが高い子ほど、早々にアイドル業界を去っていくんだよなあと、寂しいような気持ちになりました。

●姫乃たま
1993年2月12日、下北沢生まれ。日本の地下アイドル。都内でのライブ活動を中心にライター、司会、DJとして活動しているミス器用貧乏。売れる兆しなし。
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