「マンガボックス」のモザイクが秀逸過ぎる!? 模索を始めたネット配信マンガの自主規制

2014.07.21

穴殺人第1巻(講談社/裸村)

 先日、ついに500万ダウンロードを突破したディー・エヌ・エー(DeNA)のマンガ配信アプリ「マンガボックス」。テレビCMも毎日目にするし、好調なことには疑いがないだろう。

 2013年12月にサービスを開始したこのアプリは、数多くのマンガ原作などで知られる樹林伸氏を編集長に、描き下ろしや人気作品のスピンオフ、すでに単行本化されている作品の試し読みなど、さまざまな作品が毎日更新される仕組みになっている。すべての作品が無料で購読でき、今年5月からは講談社で掲載作品の単行本化も始まっている。

 毎日更新ゆえに、次第に「○曜日はどれそれの作品の続きが読める日」と生活サイクルの中に組み込まれている人も多いのではなかろうか。筆者もその一人である。

 そんな中、毎週金曜日更新の裸村氏の作品『穴殺人』で、ギョッとする事態に遭遇した。それは、先日公開された『穴殺人』第31話の最終ページだ。この作品は、主人公の住む隣の部屋の美人が実は連続殺人鬼という設定。ただし悪党しか殺さないという彼女に巻き込まれる形で事件が進んでいく物語だ。

 そんな物語ゆえに、次々と人が死んでいくのだが、この回の最後には死にたてホヤホヤの生首が描かれた。ところが、その生首と背景がモザイクで完全に消されていたのである。そして、ページの下段には次のような一文が。

「お見苦しいページになってしまったことを心よりお詫びいたします。モザイクを外した「不適切版」もとい「完全版」は単行本2巻に収録予定です」

 な…なんだってーーーーー!!

 マンガボックスは全年齢向けのアプリである。加えて、インターネットの業界には紙媒体とは違う表現の「基準」が存在するのは、すでに知られている通り。そうしたさまざまな事情が絡み合い、さすがに生首+血の表現には自主規制を行ったことが伺える。

 けれども、単にモザイクをかければ「大人の事情で、こうせざるをえませんでした」となるところが、一文を加えることで、単行本を買う気になってしまうではないか! ギリギリの表現を模索しつつ、ちゃんとビジネスも忘れない戦略は見事である。

 今後も、マンガボックスのようなスタイルでのマンガの配信は増加していくことになるだろう。そうした中で、表現の内容についてさまざまな議論が起こることもあるはずだ。しかし、紙媒体も、現在の最大公約数の妥当性のある自主規制を行うことができるようになるまでは、何十年もかかってきた。ネット配信型のマンガについても、いくつもの壁を乗り越えて、さらに面白い作品が増えていくことを期待してやまない。
(文/昼間 たかし)

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