『ジョバンニの島』はアカデミー賞入選候補? 本作と映画祭に重なってくる“ロシアとウクライナの関係”

 7月19日に公開が迫るスタジオジブリのアニメ映画『思い出のマーニー』は、釧路や根室など、主に北海道の東部を舞台とした作品である。今年はさらにその東、北方四島を舞台としたアニメ映画の公開もあった。

 2月に公開されたそのアニメ映画の名は『ジョバンニの島』。日本音楽事業者協会50周年記念作品として制作された。制作スタジオはプロダクションI.G、監督は西久保瑞穂さんである(西久保監督というと、最近では2012年の東京ディズニーリゾートのアニメCM「夢がかなう場所」を思い出すのではないだろうか)。

 この『ジョバンニの島』は北方四島の1つ、色丹島を舞台としている。1945年、第二次世界大戦の終戦後、ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)が進駐してきた中での、少年・純平と寛太の物語だ。父親はシベリア、純平と寛太は樺太へといった別れから、ロシア人少女・ターニャとの出会いなどが描かれている。

 ちなみに『ジョバンニの島』のBlu-rayおよびDVDの発売日は、8月6日となっている。15日の終戦記念日ではないが、広島に原爆が投下された日ということで、どうしても作中で描かれる第二次世界大戦を意識せざるを得ない。

『ジョバンニの島』は、国外でも話題があった。6月にフランスのアヌシーで開催された第38回アヌシー国際アニメーションフェスティバル(以下、アヌシー)で、審査員特別賞を受賞した。受賞に関しては、数々の媒体でニュースとして取り上げられていたので覚えている人も多いだろう。

 この受賞から、タイミングとして政治的背景を想起する人もいるかもしれない。“ウクライナ情勢”、すなわち現在のロシアとウクライナの関係である。

 アヌシーは、1960年にカンヌ国際映画祭(以下、カンヌ)から独立している。その独立元のカンヌは、1939年に初開催される予定だったものの、戦局の悪化により、終戦後の1946年からに延期を余儀なくされたという経緯がある。戦争はともかく、「カンヌ映画祭は日本と関係ない」と言ってしまうのは簡単である。しかしカンヌの成り立ちは、イタリアのヴェネツィア国際映画祭への嫌気からというのもある。その後、1940年に日本とドイツとで三国同盟を締結したので、直接とは言えなくとも思うところはあるだろう。

 一方、今年は第一次世界大戦の勃発から100周年の年でもある。サラエボ事件の起きた6月28日には、ベルギーのイーペルにEU首脳が集まり記念式典が開催されたのだが、“戦勝国”日本での報道は淡々としていた。日本が戦地として被害を被らなかったから、関係ないのだろうか。クリミアの検事総長が美人な点に関心が集まったり目立ったりする国は、特殊である。

 日本の政治的な関心の薄さは度々指摘されると同時に、日本作品が海外映画祭で賞を受賞すれば人々は無邪気に喜ぶ。しかし、しばしばスポーツが火種となるように、映画祭も国際情勢を切り離して考えられないものなのだ。

 例えば、アカデミー賞の政治的な話としては、2009年の第82回で『ザ・コーヴ』が長編ドキュメンタリー賞を受賞したことなら身近に感じられるはずだ。この『ザ・コーヴ』は反捕鯨の一環として、和歌山県太地町で行われているイルカ漁を題材としていた。そのため、国内で受賞に反発が起きていたのを思い出すのではないだろうか。こうした例のように、受賞作になんらかの国際情勢が反映されるケースは珍しくない。

 今回『ジョバンニの島』のアヌシーでの受賞を受けて、アカデミー賞にも意識が向いてくる。通常の長編アニメーションのノミネート(入選)候補選考の条件は、ロサンゼルス郡にて連続7日以上の上映である。前回の第86回は『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』がノミネート候補として話題となったが、同作もそのセオリーを踏襲して選ばれている。一方で、『ジョバンニの島』は同郡での上映を今のところ果たしてはいない。しかし、アヌシーはアカデミー賞の公認映画祭なので、特別賞といえどもアヌシーで受賞したことで充分にノミネート候補の可能性をうかがわせる。

 アカデミー賞はノミネート候補作品発表、ノミネート作品発表、受賞作品発表の選考プロセスを踏んでいる。ウクライナ情勢と共に注目を集める北方領土問題を描いた『ジョバンニの島』が、アカデミー賞に食い込むことができるのか? その行方に注目したい。
(文/真狩祐志)

■『ジョバンニの島』
http://wwws.warnerbros.co.jp/giovanni/

ジョバンニの島 Blu-ray 通常版

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