40代からの萌え入門 第3回

春アニメ総括!『WIXOSS』の無限少女に課せられる契約は『まど☆マギ』以上の残酷さ…マリーから虚淵玄への返答とは?

2014.07.16

——この連載は、30代後半から萌えアニメにはまったアラフォー(44)ライターが、萌えアニメについて気持ち悪く語り倒す誰得コンテンツです。分析・評論的なことは一切書きません!

(イラスト/安田三号)

 いよいよ夏アニメもはじまりましたが、今年の春アニメは本当に豊作でした。『ソウルイーターノット!』については前回書いたので、今回はほかに気に入った2作について書こうと思います。

 まずは『selector infected WIXOSS』。この作品はタカラトミーから発売されている美少女トレーディングカードゲーム『WIXOSS-ウィクロス-』の、いわゆるタイアップ作品です。アニメ『遊戯王』みたいなものですね。

 オープニングを見た限りでは、女子高生プレイヤーがカードゲームで戦うジャンプ的努力・友情・正義なお話しかと思ってしまいますが、フタを開けてみればキャラクターデザイン(『苺ましまろ』『桜Trick』の坂井久太氏)こそかわいいものの、ストーリーはシリアスそのもの。間違ってもハッピーエンドは迎えないであろう終始漂う不穏な空気感は、1話にして尋常ではありません。さすがマリー!と快哉を叫びました。

 あ、この「マリー」とは、本作でシリーズ構成と脚本を務める岡田麿里氏の愛称です。『こどものじかん』『とらドラ!』『絶園のテンペスト』『さくら荘のペットな彼女』など、どこか居心地の悪くなるヒリヒリしたドラマを書かせれば業界一だと僕は思っています。

 物語は、主人公のるう子(CV:加隈亜衣)が、とあるきっかけで「WIXOSS」のカードデッキを手に入れることからはじまります。実はそのデッキには「ルリグカード」と呼ばれるカード内のキャラクター(ルリグ)が人格を持って話しだす特殊なカードが含まれており、このカードを手にした少女たちは「セレクター」と呼ばれ、普通の人には見えない特殊なフィールドでカードバトルを行っていることがわかります。

 予想通り、回が進むに連れ「ぜんぜん販促になってないじゃないか、メーカーから怒られないのかな?」と余計な心配をしてしまうくらいキツい展開が続きます。

 「セレクター」となった少女はバトルに勝ち続けることによって、胸に秘めた願いをかなえることのできる「夢限少女」になれるのですが、3敗すると資格を失うばかりか、願いが反対の方向に働き、回復できないほどのダメージ(友だちがほしいと願った少女がせっかくできた友だちの記憶を失い孤立したり、モデル志望の少女の顔に大きな傷がついたりします)を受けるという地獄設定なのです。

 それだけでも酷いのですが、本当に酷いのは首尾よく勝ち続け「夢限少女」になった少女の行く末です。詳細は控えますが、人間ですらなくなってしまうのです。

 ……あれ? なんかに似てないですか?

 そう、構造的には『魔法少女まどか☆マギカ』とかなり類似しています。

 魔法少女が結果的に魔女になってしまうというQB(キュゥべえ)の契約もかなりのものですが、無限少女に課せられるルリグの契約はそれ以上に極悪です。

 これは虚淵玄氏(『まどか☆マギカ』の脚本家)へのマリーからの返答(もしくは挑戦)なのだなと理解しました。

 結局、話はまったく終わらず最悪の状況のまま「2期に続く」となってしまいました。10月が来るのが待ち遠しいです。あ、ちなみに、僕の推しキャラは、バトルキチガイのたま(CV:久野美咲)と実は極悪(だと思う)花代(CV:川澄綾子)さんです。

 一方、『極黒のブリュンヒルデ』も話の凄惨さでは引けを取りません。
 
 物語のヒロインは、非人道的な人体実験を繰り返す研究機関から脱走してきた「魔法使い」と呼ばれる少女達です。彼女たちは物質破壊、予知、瞬間移動などさまざまな能力を持っていますが、首の後ろに「ハーネスト」と呼ばれる制御装置を埋め込まれ、貴重な「鎮死剤」と呼ばれる薬を毎日飲まないと体がドロドロに溶けて死んでしまうという悲惨な状況を強いられています。

 彼女たちとひょんなことから知り合った主人公が、知恵と勇気で組織の追手を退け恐るべき真相に迫っていくというのが基本ストーリーなのですが……これがとにかく、人が死ぬ死ぬ(笑)。

 モブキャラはもちろん、メイン級かと思った魔法使いの少女もあっさりとドロドロに溶けて死んだりします

 それだけ聞くと悲惨な話かと思うのですが、ドラマ自体は意外とほのぼのしており、サービスカットもふんだんにあります。主要キャラが惨死した30秒後に温泉でのキャッキャウフフシーンになるなど、その落差が極端すぎて最初は戸惑ってしまうほどです。

 また、悲惨な運命にある魔女たちに悲壮感があまり見られない(内心ではもちろんいろいろあったりしますが)のも特徴です。研究機関で育てられてきたため一般常識がなく、かわいいボケをかましまくるのが萌えポイントなんです。

 10話までの時点では、『ブリュンヒルデ』が完全に今期ナンバーワンの傑作と確信していたのですが、後半、極端な駆け足展開になってしまったのが残念なところです。できれば2クールで、ゆっくりやってほしかったところですね。

 推しキャラは経験ないくせにエロいことばかり口走るカズミ(CV:M・A・O)と、カズミに豚と罵られる天然巨乳の小鳥(CV:田所あずさ)。

 同じ岡本倫原作の『エルフェンリート』もアニメ化されているのですが、こちらも唐突な首チョンパなどで伝説を残した作品のようなので、早急に見ようと思っています。

 少し長くなってしまいましたので、今回はこのへんで。

●田口こくまろ
1969年生まれ。ネット・雑誌で主に海外旅行、音楽、アニメ、グルメ、エロなど雑多な記事を手がけるサブカルライター。アダルトライター安田理央と共著で『45歳からのアニメ入門』をkindleで配信。田口和裕名義でITライターもやってます。
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