『進撃の巨人』の“リヴァイ効果”で雑誌が大売れ!! オタクを釣る作戦が大成功した「FRaU」

2014.07.13

「FRaU」(講談社)8月号

 7月11日発売の女性誌「FRaU」(講談社)の表紙に、『進撃の巨人』の人気キャラクターであるリヴァイが登場し、話題になっている。「FRaU」と言えば、ファッションとライフスタイル情報を提供する“働く女性”向けの雑誌。先月号は女優の菅野美穂、そのほかにも榮倉奈々、また女性に人気の韓国アイドルユニット・東方神起が表紙を飾っているだけに、今回リヴァイが単独で表紙を飾るのは“異様”にも見える。もちろん巻頭特集も『進撃の巨人』。“――原作者・諌山創、かく語る ふるえる異世界『進撃の巨人』とふるえない最強人類「リヴァイ」の新しい真実”と名づけられ、作者の諌山創のインタビューや一問一答などが掲載されたが、「FRaU」が購買層とは離れた、オタクを釣ってヒットさせようとする“魂胆”が見られた。

 インタビューでは、諌山創の写真を掲載し、雑誌の読者層である働く女性を意識したのか、『進撃の巨人』の内容より作者自身に対する質問が多くみられた。この『進撃の巨人』の大ヒットをどのように見ているのか、また多くの取材を受けている諌山創に対し、インタビューを受けることがマンガ家としてどのようなプラス効果を与えているのかという質問や、巻頭特集のタイトルにある言葉「ふるえる」にかけて、諌山創が「ふるえる」状態になるシチュエーション、また睡眠環境などにも迫っていた。

 そんな“正統派”インタビューとはうって変わって、読者層とは離れた“オタク”が喜びそうなネタが満載だったのが、『進撃の巨人』の担当編集者である「バック」のTwitterアカウントで募集した、作品に関する質問に諌山創が答える企画。Twitterで募集をしたということからか、質問内容は“オタク”色が強い質問が多く見られ、リヴァイの入浴・睡眠時間に迫るものから、潔癖性なリヴァイが見て一番掃除できているのは誰かといった質問があった。ちなみに現時点で一番掃除が出来ているのはエレンだそう。そんな一部の腐女子が喜びそうな(?)ネタも見られる中、リヴァイがモノノフ(ももいろクローバーZのファン)だったら誰推し? という、諌山創がモノノフであることを知った上でされた質問が掲載されるなど、「FRaU」の読者層というより、『進撃の巨人』オタクに向けた内容のようにも見えた。

 そもそも、『進撃の巨人』の主人公であるエレンを差し置いて、ここまでリヴァイを大きく取り上げていることに違和感を感じるが、これはリヴァイを主人公にしたスピンオフマンガ『進撃の巨人-悔いなき選択-』を連載し、大ヒットした「ARIA」(講談社)を受けてのことだろう。実際、同作の連載開始時「ARIA」は売り切れる書店が続出し、4月に発売した単行本1巻は60万部の売り上げを記録した。そんな“リヴァイ効果”を狙って、今回の表紙や特集を組んだと伺わせるが、見事その効果はてきめん。販売初日でAmazonの女性誌売り上げランキングの1位、また寸法を小さくした「FRaU to go!」が2位を記録(7月12日現在)。普段は購入しないオタク層が手に取ったことがその勝因と思わせる。

 しかし特集の内容は、「FRaU」の読者層に向けられた印象を受ける諌山創のインタビュー、続いてオタク向けの内容となってしまった質問コーナーと、企画の不揃い感が否めない。ほかにも『進撃の巨人』のキャラクターを星座で分析するというコーナーがあったが、いきなり登場したという印象があり、ちゃんと占いの監修者と立てているものの、とりあえず星座が好きな女性に向けたと思わせる内容。

 しかし、今回の表紙絵は諌山創の書き下ろしで、付録にそのクリアファイルが付いていることや、インタビューでは作者のことだけでなく、リヴァイ誕生のきっかけなども語られていた。また、Twitterで募集された質問に諌山創が答えるコーナーでは、リヴァイが自身の真似をするオルオについてどう思っているのかなど、興味深い質問も多く、『進撃の巨人』オタなら一見の価値はある。

 ちなみに表紙のリヴァイが手にしているマンガは、インタビュー中に諌山創が好きなマンガとしていた『オールラウンダー廻』(講談社)。しかし、足元には『失恋ショコラティエ』(小学館)が。あのリヴァイが『失恋ショコラティエ』を読んだら……。どのような感想を言ってくれるのか、ぜひ聞きたいものである。
(文/真波ゆうこ)

編集部オススメ記事

注目のインタビュー記事

人気記事ランキング