日本のラノベは世界に通用する!! トム・クルーズが何度も死んでは生き返る映画『All You Need Is Kill』レビュー

 前半はほぼ原作のストーリーをなぞってはいるものの、ケイジがリタ(エミリー・ブラント)と出会った中盤でいきなりギタイの謎が明かされてからは、いかにして奴らの攻撃を避けながら、遠く離れたギタイの中枢の居場所に辿り着くかという、よりアクション&サスペンスを前面に押し出した独自の展開へと進んでいく。死んでは記憶を保持したままその前日に生き返るというループ能力の使い方も、原作の“兵士としての経験値を積んでいく”から、“どんな事象が起こるか、すでに知っている”といった側面を強調する形になっており、それが後半の、遠く離れたギタイの中枢の居場所に如何にして辿り着くか、という“インポッシブルなミッション”をクリアするのに活かされてるのも心憎い。

 また全編にわたってケイジが、さまざまなバリエーションで戦死したり、逆にループさせるためにリタに簡単に殺されちゃったりと、トム・クルーズの世界的スターという立場を逆手にとったユーモアあふれる演出も見ものです(特に冒頭の、広告代理店あがりのチャラいメディア担当としてのトムの演技がいい。なんだかんだいって、この人は自分のパブリックイメージをキチンと自覚してるんだと思う)。

 前述のケイジの設定変更をはじめ、リタがすでにループ能力を喪失していたり、中盤以降のほぼオリジナルな展開には不満を持つ原作ファンもいるかもしれません。ただ個人的には、原作小説が醸し出していた繊細さや情緒性は薄まったものの、“ループ物”の特色を存分に引き出しつつ、アクション娯楽大作としてのインパクトの強さに舵を振り切った本作は“もうひとつの『All You Need Is Kill』”として満足できました。

 何より嬉しかったのは、本作のストーリーがここ最近のハリウッド映画と比較しても、はるかに重層的で厚みがあったこと。これは根幹となる“新兵がループによって強くなる”というアイデアが、ズバ抜けて秀逸でオリジナリティが高いことの証明でしょう。つまり、アイデアだけなら日本のラノベは、ハリウッドにも負けてない!(個人的には後半の展開は、原作のほうが好きだったりしますが)。

 実際、現在トム・クルーズは『戦闘妖精雪風』の映画化企画を進行中だそうです。こうなったら誰か、田中芳樹先生の『銀河英雄伝説』を、ピーター・ジャクソン監督で映画化してくれないかなあ。十部作くらいで。
(文/雑賀洋平)

All You Need Is Kill (JUMP j BOOKS)

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『よくわかる現代魔法』もハリウッド映画化しましょう。

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