この「面白い」というのが、また厄介なのである。『はだしのゲン』は、面白がったらいけないというオーラが強く出ている。笑ってしまっては罰が当たりそうな雰囲気だ。
僕は大学が九州だったのだけど、広島から来ている友達ができた。彼もマンガ家を目指していたので、話もあった。適当に描いたマンガも見せたりしていた。ある時、1本の4コママンガを見せたら烈火のごとく怒りだした。
それは核爆弾をネタにした話だった。
「核爆弾を笑いものにしたらいかん!! 俺なんて実家で、慰霊祭のことをイレーサー(消しゴム)に似てるって言っただけで、おやじにボコボコに殴られたんじゃけえ」
とすっごい剣幕でまくし立てられた。
正直、「うわ〜めんどくせえ。ちょっと距離をおいて付き合おう」と思った。
生まれた年や、地域によって、原爆に対する考え方は違う。『はだしのゲン』はそこをまっすぐ見つめて描いた稀有な作品だけど、でもそれでもやっぱりマンガなのである。楽しんで読んでいいのだと思う。
ゲンたちが、拷問に慣れるために、自分たちの尻を叩き合うシーンではぜひ笑っていただきたい。
ゲンは中学を卒業して、看板屋で働くことになる。ゲンがこんなに大人になるまで描かれているとは、全く知らなかった。隆太はヤクザを殺した件で、東京に“逃げた”が、ゲンは、自分を試すために東京に行くことに決めた。
残念ながら、ここで『はだしのゲン』は終わってしまうのだが、本当はまだ続きを描く予定だったといわれている。続編では、東京でのゲンの戦いが描かれる予定で、実際に少しだけ原稿は描き進められていたそうだ。
結局、その原稿は世に出るに至っていない。とても残念だ。
ゲンが東京でどう暮らしていくかも興味があるけれど、やはり一番は、第二部ですっかりお気に入りのキャラクターとなった隆太がどんな人生を送るのかを見てみたかった。ヤクザのボスになるのか、レジスタンスになるのか、東京でもブチ切れて人を殺すのか……。
まさしく麦のように、たくましく生きていくさまを読みたかったと思うのだ。
●村田らむ(むらた・らむ)
1972年、愛知県生まれ。ルポライター、イラストレーター。ホームレス、新興宗教、犯罪などをテーマに、潜入取材や体験取材によるルポルタージュを数多く発表する。近著に、『裏仕事師 儲けのからくり』(12年、三才ブックス)『ホームレス大博覧会』(13年、鹿砦社)など。近著に、マンガ家の北上諭志との共著『デビルズ・ダンディ・ドッグス』(太田出版)、『ゴミ屋敷奮闘記』(鹿砦社)。
●公式ブログ<http://ameblo.jp/rumrumrumrum/>
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