Kindleでも読める30年前の名作プレイバック 第13回【後編】

“面白い”と言いづらかった『はだしのゲン』の第二部は、主人公たちの成長が凄まじくてやっぱり面白い!

 まだ壊れたままの校舎で授業をしていると、不良児童たちがやってくる。そのひとりが、第一部でヤクザを殺して行方をくらましていた隆太だった。

 この隆太が、とてもいいキャラなのだ。

 読んでいると、ドンドン引きつけられていく。隆太は家族全員を原爆で失い天涯孤独になった後、孤児たちで窃盗団を作り生き延びてきた。

 ゲンとは血のつながりはないけれど、それ以上に強いつながりを持っている。とにかく明るくて、ひょうきんで、広島カープのファンで、「東京ブギウギ」が好きで、周りを楽しくさせるタイプの人間なのだが、ゲンとは違い、深い闇に生きている。

 そもそも隆太は、小学校時代にヤクザ2人を撃ち殺しているという過去がすごいが、ゲンと別れた後もヤクザの下働きをしており、縁を切るために再び拳銃を発砲する。

 その後もゲンの母の治療費を稼ぐために、ヤクザの賭場を荒らして現金を盗む。ヤクザの報復から逃げるために感化院に入るが、脱走。最後には、幼なじみの友人をシャブ漬けにされた報復のため、拳銃でヤクザ3人を撃ち殺した。

 もうこのシーンは鳥肌が立つほど、かっこいい。

「おどりゃ 地獄へ落ちて自分のやった罪の深さをしっかり反省せえ 死にやがれっ」

 悪の手でより深い悪を殺す。必殺仕事人にも通じる悪の美学がある。ピカレスク小説(悪漢譚)と言ってもいいかもしれない。

 昨今いろいろ言われた、『はだしのゲン』の第二部だけど、隆太というキャラクターにぜひ出会ってほしい。これほど光と闇、とても強いコントラストを持ったキャラクターはめったにいない。

 第二部でもゲンの周りには不幸が続く。最愛の母も死に、ゲンが命を救った夏江も死ぬ。そして中学を卒業してはじめてできた恋人、中尾光子も白血病で死ぬ。とにかく周りからバタバタと無慈悲に人が死ぬ。とても悲しい話だ。

 だが、決して暗いだけの話ではない。ゲンはとにかく動く、そして働く。

 一部では、お経を読んだり、浪曲を読んだりして金を稼ぎ、日本人の骸骨を米兵に売り、金属を盗み、反戦小説を出版しては米軍基地にとらえられ、アメリカ軍のジープやトラックを破壊する。

 行動的なキャラクターは見ているだけで面白い。シビアなマンガだからこそ、一コマ一コマを見ると滑稽な表現も多い。つい笑ってしまうこともある。

はだしのゲン 2

はだしのゲン 2

知らない(覚えてない)シーンも盛りだくさん

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