Kindleでも読める30年前の名作プレイバック 第13回【前編】

『はだしのゲン』こそ“原爆を擬似的に体験できる装置”! 忘れないために書き留めらた真実とは

――今から30年前以上前、そう僕らが子どもだったあの頃に読みふけったマンガたちを、みなさんは覚えていますか? ここでは、電子書籍で蘇るあの名作を、振り返っていきましょう!

140704_rum_01.jpg(イラスト/村田らむ)

 小学校低学年の頃、母親に連れられて行った図書館で、はじめて『はだしのゲン』に出会った。僕の世代の人たちは、だいたい同じ頃に、同じような形で、『はだしのゲン』に出会っているだろう。

 当時、親が読むのを許可してくれるマンガは多くなかったが、『はだしのゲン』は無条件で読んでいいマンガのひとつだった。

 しかし、手塚治虫作品や藤子不二雄作品などと同じような作品だと思って読み始めて、衝撃を受けた。そのまましばらく気分が塞いでしまった。同じ経験をした人は、大勢いるのではないだろうか。

『はだしのゲン』の連載が始まったのは1973年。僕はまだ1歳なので当然記憶はないが、掲載されていた雑誌は「週刊少年ジャンプ」だった。後に『ドラゴンボール』『スラムダンク』『ワンピース』などなど、時代の最先端のマンガが次々と誕生した「週刊少年ジャンプ」に、いかにも泥臭い『はだしのゲン』が連載されていたというのは、なんとも不思議な気持ちである。

 しかし、やはり「ジャンプ」では連載は続かず、単行本もその版元である集英社ではない別の会社から発売された。その後、一気に注目の作品になり、今でも読まれるベストセラーになったのだ。

 今回、ずいぶん久しぶりに読み返してみると、物語が始まってから、原爆が落ちるまでにしばらくエピソードがあることに少し驚いた。記憶では、物語が始まってすぐに原爆が落ちたような気がしていたからだ。

 平和主義者の父親が近所から疎まれる様子や、食べるものがなくひもじい様子が丁寧に描かれている。そんなゲン一家に、どっぷり感情移入した頃に、原爆は投下されるのだ。父、姉、弟は家の下敷きになり、生きたまま焼かれていく。

「ギギギ あ…あんちゃん…」

と叫びながら死んでいく弟の姿は、壮絶だ。

 原爆が落ちた後のエピソードは、作者が実際に見聞きしたものが多いからだろう、マンガのスタイルが、フィクションマンガのスタイルより、実録マンガに似ているな〜と思った。

 わかりやすく言うと、「週刊少年ジャンプ」よりは「漫画実話ナックルズ」に掲載されてそうな描き方なのだ。

 ひとつひとつのエピソードが、とてもリアルである。ただし、そのエピソードが必ずしもストーリーにからんでいるワケではない。単発のエピソードの集合になっている部分も多い。

 手の皮が剥けて垂れ下がり、お化けのような姿になって歩く人。無数のガラスが突き刺さり泣き叫ぶ親子。元気だったのに急に血便を出して死んでいく兵隊さん。川の中で腐って膨れて異臭を放つ大量の死体。爆風で数メートルも飛ばされた電車と、中で死んでいる死体。死体にたかる大量のウジ虫。そして湧いた大量のハエの群れ。

 実際に見た人間が描く原爆投下後の広島の現実は強烈で、それゆえひとコマひとコマの描写が胸に突き刺さる。30年以上経った今でも、このインパクトはハッキリと覚えていた。

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