再起動すべきはKADOKAWAじゃないのか? 『キカイダーREBOOT』が忘れた特撮の原点

 また、かつてジローを演じた伴大介が、光明寺博士の恩人である前野究治郎という心理学者役として登場するのだが、その柔らかな表情と演技でシーンを暖かく包みこみ、注意深く観なければ過去に颯爽とジローを演じた俳優だとは気付かないほどの表現を試みている。だが、仮に40年後、リブート版ジローを演じた入江甚儀が同じく前野役にオファーされたとしても、壮年となった伴大介と同質の演技が可能か否か、リブート版を観た限りでは疑問点ばかり。

 今回のリブート版のキャッチコピーは、『善か?悪か? この「機械(ココロ)」が壊れても、君を守る―』という、鑑賞前から二極対立を煽るような文言のわりには、ハカイダーは黒いバイクに乗って現れるのに、終盤まで待てどもキカイダーが操縦するサイドマシーンは一切登場せず、突如としてギルバート神崎がハカイダーへと変身したわりに、前半から出ずっぱりの女性型アンドロイド・マリはビジンダーに変身すらしない。

 また、総理やら国防大臣が物々しく劇中でうごめいていたにもかかわらず、国家間紛争になるような出来事に発展しないままに強制終了。なんともバランスの悪い展開で、劇中での二極対立が盛りあがらない理由は、このような緩い設定に起因しているのではないか? と感じざるを得ない未完成な脚本なのだが、製作者が執筆に2年の歳月を費やしたと豪語している本当の理由が予算の縮小ならば笑えない。

『人造人間キカイダー』は緩急、静と動、明と暗、笑顔と憂い、人間と機械、ドラマと特撮の融合、善悪の領域がハッキリと描かれており、リアルにスタッフ、キャストが毎週一丸となって、お化け番組と呼ばれた同時間枠の“ダーク”ならぬ“ドリフ”と戦っていた戦歴が視聴者との間に絶妙な緊張感を生み、人々の記憶に強烈に残る特撮ドラマとして語り継がれていったのだろう。不完全なキカイダーの宿命的なテーマから察するに、『キカイダー REBOOT』の宣伝部は嘘でもいいから『アナと雪の女王』などのハリウッド的大作へと宣戦布告し、オリジナルの高視聴率にあやかる意味でも、リアルな二極対立へと宣伝を煽るべきだったのでは、と思えてならない。

 劇中で“ドリフ”というキーワードを何度も使用しておきながら、キカイダーは何と戦っているのか一切提示されずに観客を放置した製作者に対し、「ハリウッド大作打倒のためにはいかなる手段も選ばず」というハカイダー的な脳ミソを埋め込みたくなるのは、決して我々オヤジ世代だけではないはずだ。斬新な邦画を製作するお家芸のKADOKAWAリブートを願うばかりだが、作品への良心回路だけは決してお忘れなきよう。
(文/長良川 清)

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