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再起動すべきはKADOKAWAじゃないのか? 『キカイダーREBOOT』が忘れた特撮の原点

2014.06.18

 また、人間ドラマしてのキャスティングも絶妙で、宿命に突き動かされる若者・ジローを熱演した伴大介、ミツ子役・水の江じゅんと弟マサル役・神谷政浩の愛くるしいコンビネーション、そしてサブキャラの手本のような服部半平を巧妙に演じた植田峻、ドラマの根幹を成す伊豆肇演ずる光明寺博士の苦渋にみちた表情や、そのライバルであるプロフェッサー・ギルを冷徹に演じる安藤三男の存在感は正直、当時の特撮番組の域を越えており、俳優とはかくたるものと証明するような真摯な表現力によってドラマは支えられていた。

『ウルトラマン』のハヤタ隊員役で知られる黒部進や、『仮面ライダー』で本郷猛を演じた藤岡弘、は、特撮番組で人気を博しつつも、その後の俳優人生を実りあるものとし、『ロボット刑事』でベテラン刑事・芝大造を演じた高品格は、映画『麻雀放浪記』における出目徳役の演技が認められ、第58回キネマ旬報賞を始めとする数々の助演男優賞に輝いて往年の特撮ファンを魅了した。

 そう、『スター・ウォーズ』のハン・ソロ船長役から一気に個性派俳優へと大出世を遂げたハリソン・フォード的な感性に国境はなく、洋邦を問わず、特撮ドラマにこそ血肉の通った人物を演じきる等身大の俳優たちが必要とされているのだ。

 そんな思いを抱きつつ、映画『キカイダー REBOOT』を鑑賞したのだが、まずは上記の主要アイテムが一切出てこないどころか、なんとも無表情なリブート版キカイダーと、リブート版ジローを演じる俳優・入江甚儀の表情のなさに意気消沈。これは演出なのだろうか? リブート版キカイダーのあまりに特撮ヒーローにありがちな凡庸なマスクは、『人造人間キカイダー』の原作者である石ノ森章太郎の、「不完全な良心回路を持ち、善と悪の狭間で苦悩する人造人間」という情念を視覚的に描いた見事なまでの造形に泥を塗ってはいないか?

 リブート版ではエンドロール直後、ザ・コレクターズがカバーする「ゴーゴー・キカイダー」とともに、『人造人間キカイダー』放映時のスチール写真が次々と投影されるのだが、本編の退屈な劇中音楽がやんだ途端から、かつて熱狂したオープニング曲と相まって映し出された懐かしいキカイダーがあまりにも物憂げな表情なために、たった数秒間のスチール写真がリブート版キカイダーの表情を一瞬で凌駕するという後味の悪いエンディングを呼ぶ。

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