「ひとつになっていいことだらけ」じゃない!? KADOKAWA社内に流れる冷え切った空気

2014.06.12

 今年5月に発表されたドワンゴとの経営統合で、出版社から総合コンテンツ企業へと脱皮しようとしているKADOKAWA。10月には株式会社KADOKAWA・DWANGOが設立され、出版社としてのKADOKAWAはその子会社となる予定だ。

 コンテンツ業界の巨人の誕生だが、その社内では歓迎する声ばかりではない。

 従来、同一グループだが別会社として運営されていた9社(株式会社角川書店、株式会社アスキー・メディアワークス、株式会社角川マガジンズ、株式会社メディアファクトリー、株式会社エンターブレイン、株式会社中経出版、株式会社富士見書房、株式会社角川学芸出版、株式会社角川プロダクション)が、吸収合併によりKADOKAWAとなったのは昨年10月のことだ。

 この時期から、各グループの社内には、次のような標語が貼られた。

「ひとつになっていいことだらけ」

 KADOKAWAグループ各社の整理統合。さらにはドワンゴとの合併によって、やっぱり“いいことだらけ”なのか?

 社員に聞いてみると、首をかしげる者のほうが多い。

「そりゃ、いいこともあるかもしれませんが……実感はわきませんね」と、グループ内に所属する編集者は話す。もちろん、会社がひとつになったからといって、末端まで即座に影響を与えるなんてことはほぼない。そのためか、上層部が、これから大きく変わるぞ! という意気込みを見せれば見せるほど、社内には冷めた空気が広がっているようだ。

「外から見ても一目瞭然ですが、社内にオタク向けコンテンツを扱う部門がいくつも競合しているような状態ですから、これからどのように整理統合していくのか。それを考えると不安のほうが大きいですね」

 いくらKADOKAWAによるオタクコンテンツの寡占が進んだところで、将来までそれを維持できるかといえば疑問だ。オタクコンテンツは、あくまで水物の商売だ。巨大な看板を使って独占を図ったところで、それが未来永劫通用するかは疑わしい。ドワンゴとの合併は、もはや自分たちでコンテンツを生み出すことを諦めて、流通企業にシフトしようとしているとの見方もある。

 これも、企業の一つの選択。けれども、角川書店はその歴史を辿れば、角川映画や『角川日本地名大辞典』という文化事業で名を成してきた会社でもある。それが単なる流通企業へシフトするとしたら、あまりにも悲しい気がするが……。
(取材・文/長良川 清)

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