安田理央の「特殊古書店ダリオ堂」 第5回

「痴漢は犯罪」だけど「満員電車徹底攻略」法を伝えようとした痴漢専門誌の行方

――ようこそ、「特殊古書店ダリオ堂」へ。当店では、ちょっと変わった本たちを皆様にご紹介していきましょう。

140612_rio01.jpg「フィンガープレス」(笠倉出版社)の記念すべき1号目。

 90年代のエロ本界は、細分化が進んでマニア系やフェチ系の専門誌が次々と誕生しました。脚フェチ専門誌やスカトロ専門誌なんかは、かなりの成功を収めたのですが、その一方で空振りに終わった専門誌も多かったのです。そのひとつが、1996年に創刊された「フィンガープレス」(笠倉出版社)。なんと、痴漢専門誌なのです。

 今では世論的に絶対刊行不可能だと思われますが、この頃は痴漢歴30年という山本さむ氏が自らの体験を綴った「痴漢日記」がベストセラーになり、映画化もされるなど、ちょっとした痴漢ブームが起きていたんですね。

 この「フィンガープレス」創刊号の表紙にも、大きく「あの山本さむ氏も全面協力!!」なんて書かれていたりして、スター扱い。おおらかな時代です。

 しかし、痴漢というのは明らかな犯罪なわけで、その辺を考慮してなのか表紙には「世界初の痴漢専門誌です、ハイ。といっても痴漢を奨励するものでは決してありません。男なら痴漢願望はみんな持ってますよね。でもそれをしちゃあおしまいじゃないですか。けれども満員電車は一向に無くならないし、女の子はますます露出してくるし……。だから何ですよ、この雑誌を呼んで実際に行為はせずに願望を満たしてほしいと、そういう気持ちから作ったわけです。いわば犯罪防止雑誌ってとこですか」なんて言い訳が延々と書かれ、1ページ目には「痴漢は犯罪です。」と大きな文字が踊っています。

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 いや、ま、でも内容は「満員電車徹底攻略 山手線内回り編」「場所別痴漢考」なんて実践的なハウトゥーや、山本さむ氏が痴漢仲間と対談する「痴漢列伝」(第1回のゲストは山手線のゴンさん)、痴漢3人と痴漢被害にあう女性3人による座談会など、どうみても痴漢を肯定するようなトーンになっているのです。そりゃあ、こんな本を買う読者は、確実に痴漢に興味がある人なわけですから、当然ですよね。

140612_rio03.jpg問題の「満員電車徹底攻略」はこちら。

「アイドルは痴漢しても絶対に騒がない。そこが狙い目」と女子高生アイドル専門に狙う痴漢の告白なんて、ひどいもんですよ。1996年に高校を卒業した、あるグループの一員であるA・Oと、大手プロダクションに所属するもずっとB級のままだったというY・Kを痴漢した話を書いているのですが、雑誌の記事などから通学に使う電車を割り出していく下りなどは実にリアリティがあります。そして当然、痴漢した時の反応の描写なども……。いやいや、いけません、いけません、痴漢は犯罪です。こんなことで興奮してはいけませんよね!

「痴漢は犯罪」だけど「満員電車徹底攻略」法を伝えようとした痴漢専門誌の行方のページです。おたぽるは、人気連載書籍その他ホビー連載の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

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