「実用」目的の所持の範疇とは? 児童ポルノ法改定案・衆院法務委員会での審議が明らかにしたもの

1406_homuin.jpg衆議院インターネット審議中継6月4日のビデオライブラリ・ページより。

 今月4日に開催された、衆院法務委員会の児童ポルノ法改定案に関する審議。

 すでに法務委員会に席を持つ自由民主党・公明党・民主党・日本維新の会・結いの党の5党では合意が終わっていた。その中で、審議を行う意味とは質問と回答を議事録に記録すること。すなわち、法の運用におけるFAQとしての意味、そして関係省庁……警察などが下手なことをできないように釘を刺す目的があった。

 つまり、ここで行われた審議とは質問者と提案者にわかれて「これはどうですか」「それはこうです」とのやりとりを繰り返し記録していったというわけだ。

 審議の議事録は、後日公開される予定。また、審議の様子は中継も行われていたので、togetterにはそのまとめが(外部参照)、衆院のビデオライブラリでも公開が始まっている(外部参照/完全公開なのに、テロ対策なのか傍聴席はメモとペン以外は持ち込み禁止……謎だ)。

 その中から重要と思われるトピックスをいくつか記してみよう。

 まず、重要なのは今回いよいよ導入された所持の禁止に関する項目。これについて、民主党の枝野幸男衆院議員は、いくつもの質問をぶつけている。

 まず、今回の所持禁止は、いうなれば「実用」の目的で所持することを禁止するもの。学術文化や報道目的は除外される。それでは、図書館などが所持している場合はどうなるのか。この質問に対しては「該当しない」という回答。つまり、国会図書館や公益財団法人の大宅壮一文庫などには、数多くの「児童ポルノ」に該当すると思われる雑誌・書籍が収蔵されているが、これらは「児童ポルノ」に該当しないというわけだ。

 さらに、枝野議員は、学術などに限らず、フリーのジャーナリストが所持していた場合や、あるいは枝野議員の場合、過去に議論の際に「児童ポルノ」のサンプルとして受け取ったものを所持している可能性があるが、その場合はどうなるのか? という主旨の質問をする。

 これにも同様に「該当しない」との回答が。さらに、購入時には性的目的があったかもしれないが、現在は性的な目的がない場合についても「該当しない」との回答があった。

 この質疑で明らかにされたのは、性的目的であることが客観的に証明できる……すなわち本棚に整理して置いてあったり、大量に所持、あるいはPCにフォルダを分けてなど、誰が見ても「実用のために持っている」ということがわからなければ、「自己の性的好奇心を満たす目的」という点に該当しないということだ。家に保管されている古雑誌などに、たまたま掲載されていても問題にはならない。質疑の中では「(廃棄のために)わざわざ家を家探しする必要はない」との言葉もあった。

 続いて質疑者となった日本維新の会・高橋みほ議員は、18歳未満まで児童という年齢設定は高すぎで、13歳未満にしたほうがいいのではないか? という旨の発言をした上で、18歳になるかならないかの年齢だった場合について質問。

 これに対しては、18歳未満に設定しているのは既存の条約や法律との整合性を取るためであるということだった。また、20歳だと思って買った写真集の被写体が実は16歳だとしても所持には該当せず、ただし、20歳と表記されているが、誰もが実は16歳だと認識していたら該当するが、いずれにしても、捜査当局が客観的に時期、入手経緯、方法を立証できなければ該当しないという回答が得られた。

 つまり、明らかに「児童ポルノですよ!」とわかった上で売買、交換して入手したのでなければ、罪にはならないというわけだ。

 この審議によって、捜査当局が手軽に国民を逮捕する手段として用いる可能性は幾分か緩和されたはず。とはいっても、捜査当局側もそれを超えるロジックを考えてくることも考えられる。児童ポルノ法をめぐる議論はここから新たに始まっていく。
(取材・文/昼間 たかし)

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時代でたゆたう規範とどう折り合うか。

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