「an・an」(マガジンハウス)が、ついにリアルを捨てた! と話題を呼んでいる。というのも、5月21日発売号の「an・an」の表紙を飾ったのは、ジャニーズアイドルでもイケメン俳優でもなく、『進撃の巨人』のリヴァイ兵長に、『失恋ショコラティエ』の小動爽太、『銀盤騎士』の雉子波心といったマンガのキャラたちだったからだ。しかも、「an・an」の名物企画だった「好きな男・嫌いな男ランキング」が6年ぶりに復活したのだが、なんとこれがマンガキャラのランキングに様変わり。「an・an」といえば、モテや恋愛特集が定番のリア充女子のための雑誌。それがリアルを捨て2次元に舵を切ったとすれば、大事件である。しかし、一体どんなキャラがランクインしているのだろうか。
読者300人のアンケートをもとに選ばれたという今回のランキング。まず、好きな男ランキングで選ばれたのは、少女マンガの王道キャラたちだ。クラスになじめなかったヒロインをさり気なく支えてくれる『キミに届け』の風早翔太は、「まさしく理想の彼氏!」と20代女子から圧倒的支持を得た。同じように、陰からヒロインを支える『ガラスの仮面』の速水真澄も「不器用ながら、誰よりも一途にマヤを想うあなたが好き」と大絶賛されている。
そして、真澄とマヤのように、身分違いの恋に燃える『花より男子』の御曹司・道明寺司にも「とにかくピュア」「常に直球勝負の愛情」が魅力という声が多数集まった。自分だけの王子様といった感じの彼らには、現実に存在しないとわかっていても憧れてしまうのだろう。それに『SLAMDUNK』の無口なスター選手・流川楓や、多くの女性を虜にしたぶっきらぼうなイケメン『ときめきトゥナイト』の真壁俊などもランクイン。寡黙でぶっきらぼうだけど、ヒロインにだけはやさしい。そんなギャップが人気のようだ。
一方、「抱かれたい男」ランキングのほうはどうだろう。まずはファッションデザイナーを目指す『Paradise Kiss』の小泉譲二。ドSなのにベッドシーンではとろけるような扱いをする彼に「意地悪を言われても、ここでやさしくされたらチャラ」と思う女性は大勢いるようだ。また、ドラマ効果もあるのか、片思いを引きずり続ける『失恋ショコラティエ』のヘタレ男・小動爽太もランクインしている。高校時代からの思い人にフラれてもフラれても諦めきれず、好きでい続ける女々しい彼だが、セフレを誘うときの「する?」というセリフと表情の色っぽさにやられたという女性は少なくない。
同じく色っぽさでは、『ふしぎ遊戯』の鬼宿や、『天は赤い河のほとり』のカイルも負けてはいない。『ふしぎ遊戯』は作風もちょっとエロいのだが、鬼宿に投票した読者は、読んでいる間ずっとヒロインになりきっていたらしく「愛されて、守られて、心もカラダも結ばれて…物語が壮大すぎて現実に戻るのがつらかった」とコメント。カイルに対しても「1週間くらいずっと抱き続けてくれそう」というコメントがあがっており、どっぷりと作品の世界観に入り込んで妄想していた人が多い。ほかにも、『美少女戦士セーラームーン』のタキシード仮面や『ルパン三世』の石川五右衛門を選ぶ女性もいたようで、色っぽさやクールな普段とのギャップが「抱かれたい!」と思うポイントになっているようだ。また、『子どものおもちゃ』の問題児だった小学6年生の羽山秋人もランクイン。「まだ子供なのに、目つきとかが色っぽい」のだそう。
小学生が抱かれたい男というのも驚きだが、しかし、それ以上にランキングを眺めていてどうにもしっくりこないことがある。たとえば、表紙を飾っている『進撃の巨人』のリヴァイ兵長が、ページをめくってもめくってもランキングのどこにも出てこないのだ。『進撃の巨人』だけではない。『銀盤騎士』の雉子波心も、『黒子のバスケ』の赤司征十郎や青峰大輝も、コミカライズもされている『うたの☆プリンスさまっ♪』の一ノ瀬トキヤも、いない。腐女子、乙女たちから圧倒的な人気を誇る、いま旬の作品からはまったくランクインしてきていないのだ。
そういえば、ランクインしている作品は、『ときめきトゥナイト』『ガラスの仮面』『SLAMDUNK』『天は赤い河のほとり』『ふしぎ遊戯』……と90年代や昭和時代の作品ばかり。『君に届け』『アオハライド』『失恋ショコラティエ』とゼロ年代以降の作品も何作かはかろうじて入っているものの、全体的にはやはり懐メロのランキングでも見ているようなレトロ感が拭えない。オールタイムベスト的な作品が票を集めてしまったのもしれないが、これでは今どきの腐女子や乙女には物足りないことだろう。
雑誌は売れない、キムタク頼みももう限界、ならば勢いのある2次元で新しい読者を開拓しよう! ……と狙ったのかもしれないが、はからずも、「an・an」読者の高年齢化を証明した結果になってしまった。
リニューアルを試みたり、女子アイドル特集をやってみたり、ここのところ試行錯誤を繰り返している「an・an」だが、その迷走はまだまだ続きそうだ。
(文/篠山サクラ)
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