トキワ荘の思い出に『3月のライオン』秘話まで! 「第18回手塚治虫文化賞」贈呈式レポート

■『3月のライオン』で食事シーンが頻繁に出てくる理由

1405_tezuka_3.jpg会場には受賞作のパネルも並んでいた。
(撮影/浜田六郎)

 二組目の対談は、大賞の羽海野チカ氏とマンガ『テルマエ・ロマエ』の作者・ヤマザキマリ氏。二人は2年前の『マンガ大賞』の際に初めて顔を合わせ、それからイタリア在住のヤマザキ氏が日本へ帰ってくるたび親交を深めているという。

 壇上に上がると、二人はまず「(藤子(A)先生たちの話が)面白すぎて、自分たちが上がらなければいけないことを忘れていました。緊張しています」と恐縮した様子でマイクを取った。羽海野氏はヤマザキ氏から「今日は黒い衣装を着ると聞いていました」と着用しているドレスについて訊ねられると、「トークショーもやると聞いて不安になってしまって、夜中にツイッターで『着ていく服もないしどうしよう』と暗い話を切々と呟いていました。そしたら、服飾デザイナーの丸山敬太さんがドレスを作ってくださったんです。勇気の甲冑を着て、今日はこの場に立っています」とはにかんだ。

『3月のライオン』についてヤマザキ氏から「羽海野先生のマンガは、いじめなど社会の問題に触れているのに、どんなに嫌な人でも憎みきれない。最後に救いがあるような魅力的なキャラクターが描かれていますよね」と話を振られると、「人間って一方向から見たんじゃわからない。表も裏も悪い人なんていなくて、関係性だけなんじゃないかと思うんです。そういうのを描いていきたいのかもしれないです」と答えた。

 ヤマザキ氏が自身の担当編集から「マンガの面白さはマンガを通して作者が透けてみえること」と言われた話を持ち出すと、「マンガってその人の性格で描くものなので、正解のマンガってないんだなぁって思います」と羽海野氏も共感。また、「(作中の)三姉妹の食欲ヤバイですね。甘い物を盛りつける描写を見ると悶絶しそうです。イタリアに甘味屋も大福もないですから」とヤマザキ氏が食事シーンを絶賛すると、「私、わりと思い詰めたぐるぐるしたマンガを描いてしまいやすいので、読者さんが苦しくなっただろうな、と思った頃に美味しい食べ物を出すようにしています。それも誰でも食べたことのある、おにぎりやシチュー、カレーなどを」とストーリー進行のリズムを明かした。

 そして、「1984年にイタリアへ行った私にとって、日本の風景は昭和時代でストップしている」というヤマザキ氏が「先ほどの藤子(A)先生のお話ではないですけど、お金はないけど幸せっていっぱいあったはず。そういうのを思い出させてくれるのが『3月のライオン』なんです」と熱弁。これに対し、「世代が変わっていく中で、若い人たちに昔はこんな時代だったとわかってもらえるマンガになったら嬉しいです」と、羽海野氏も“昭和”への愛を語った。

 最後に「アトム(のブロンズ像)とおうちに帰れるのがホントに嬉しくて」と羽海野氏が顔をほころばすと、「私はアレを(イタリアへ)持って帰ろうとして税関で捕まりました。結局別送便で送りましたよ」と自身が賞を取った時の裏話で会場を沸かし、ショーは終了した。
(取材・文/牧野絵美)

3月のライオン 9 (ジェッツコミックス)

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なんでこんなに食べるんだろう、とは思ってた。

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