いま美少女ゲーム音楽が熱い! 業界を盛り上げろ! P.C.M Live! 2014ライヴレポ!

P.C.M Live! 2014


 少し前になるのだが、4月19日に東京の新宿BLAZEにて美少女ゲーム/エロゲーの音楽のみで構成された音楽フェス「P.C.M Live!」が開催された。

 P.C.MとはPC GAME MUSICの略称だ。美少女ゲーム/エロゲーの音楽ライヴというと、ブランドが各々開催するニトロプラスの「NITRO SUPER SONIC」やあかべぇそふとつぅの「あかべぇそふとつぅLIVE」などがあるが、ブランドの垣根を越えたフェスとなると、他にB.G.M Festivalがある。ちなみにB.G.MはBISHOJO(美少女) GAME MUSICの略だ。

 OVERDRIVEの代表であるbamboo氏を中心にB.G.M Festivalは初回を品川ステラボール、第二回目をZEPP TOKYOで二日日間開催するなど大規模で、メジャーな音楽フェスに近い形態で開催されたビッグイベントだった。一方P.C.M Live!は美少女ゲーム/エロゲーを中心に活躍しているシンガーのAyumi.(旧オリヒメヨゾラ)が中心に開催された比較的手作り感のあるアットホームなイベントだ。B.G.M Festivalとの直接的なつながりはないかもしれないが、両者は兄妹的な存在に近いフェスと言っていいだろう。

 P.C.M Live!のコンセプトとして、“「PCゲームアーティスト」が主導の「PCゲームユーザー」とつくる「PCゲーム業界の未来」のためのライブ”として掲げている。美少女ゲーム業界が縮小してきていると言われているが、実際ここ数年で『School Days』で一世を風靡したOverflowが美少女ゲームの制作を中止したり、違法ダウンロードなどに対して各メーカーが警鐘を鳴らし続けているのにも関わらずツイッターなどで割れ自慢をするユーザーが登場し、Purple softwareの石川氏と一悶着があるなどマイナスイメージのニュースはいくらでも思い起こすことができる。過去にminoriの酒井伸和氏やOVERDRIVEのbamboo氏にインタビューした際も業界の縮小化に対して否定は一切しなかった(参照記事:酒井氏インタビューbamboo氏インタビュー)。かといって業界が縮小していくのを各メーカーは指をくわえて眺めているのではなく、先日Keyの馬場隆博氏が美少女ゲームのキャラクターコンテンツ即売会であるCharacter1を開催するなど(参照記事)、それぞれがやれることをやり、業界を盛り上げようとしている。Ayumi.がP.C.M Live!を開催することは“美少女ゲーム業界が縮小してきていると言われている”ことへの彼女なりの“回答”なのだろう。

 そんなAyumi.の熱い思いを体現したかのように、P.C.M Live! 2014は美少女ゲーム業界への愛情を感じさせ、エロゲーマーをにやりとさせる演出が随所にちりばめられたフェスとなっていた。会場は最初に述べたように東京の新宿BLAZE。キャパシティーは800人らしいが、会場は満員御礼だった。開場前からかなりのファンが新宿の旧コマ劇前広場に集結していた。ライヴはゲームをプレイしている風に演出され、最初に出演者の一覧が表示され、「どの子を攻略する?」のアナウンスのもと出演者がルーレットのように選ばれて登場した。

美声でトップバッターの重責を吹き飛ばすAyumi.美声でトップバッターの重責を吹き飛ばすAyumi.

 トップバッターは主催者のAyumi.と、minoriなど多くの美少女ゲーム音楽やアニソンを手掛ける柳英一朗からなるAstilbe × arendsiiだ。スタートを飾った楽曲は『 Electro Arms -Realize Digital Dimension-』の「g@me:s_t_a_r_t」だ。イントロが鳴った瞬間、歓声が怒号のようになり会場は一気に盛り上がりの沸点へ到達。それに応えるようにAyumi.も熱唱した。フェス開催前でファンによるセットリスト予想があったようだが、多くのファンがこの曲でスタートすることを予想していたらしい。タイトルからして確かに相応しいのだが、簡単に当てられたAyumi.は少々悔しそうだった。

 1曲目が終わり、MCに入ったのだが、実はこの時点でステージのフロントにはAyumi.しかいない。柳英一朗が見当たらないのだ。しかしステージの照明が明るくなったことで気が付いたファンが多くいて笑いがおこったのだが、柳英一朗はバックバンドの一員のようにしてステージに既に上がっていた。P.C.M Live!は女性しかステージに立てないという掟があるようで(バックバンドは全員女性。キーボードのみ女装)、柳英一朗もそれにならい女装してギターを弾いていたのだ。柳英一朗といえば本来はベーシストなのだが、民安ともえがリーダーの民安★ROCKではキーボードを担当するなどマルチなプレイヤーである。2曲目の「伝承の華」(『戦場のフォークロア』より)の歌唱もなんなくこなし、トップバッターして会場を盛り上げた。

おっぱいコールで会場をカオス化したdoubleeleven UpperCutカオス化した会場にご満悦(?)

 次の登場はdoubleeleven UpperCutだ。doubleeleven UpperCutは山下航生と声優の春河あかりからなるユニットで、下ネタ全開(?)の電波ソングを売りにしている。1曲目の「boys, be “stand up”!!」(『ぜったい絶頂☆性器の大発明』より)からファンからは「おっぱい!おっぱい!」のコールが起き、会場がカオス化した。2曲目の「Dawn to Azure」(『おっぱい戦争 – 巨乳 VS 貧乳 -』より)でもファンとの駆け引きは抜群で随時合いの手が入った。

 doubleeleven UpperCutはライヴ数が少ないユニットだ。今月6/21にワンマンライヴが予定されているが、なかなか観られるユニットではないことは確かだ。

確かな歌唱力でファンを魅了したカサンドラ音大で声楽専攻なんてガチすぎる!!

 3番手に登場したのが赤いバラのような妖艶なドレスで登場したカサンドラだ。「ミラクル☆デイズ」(『あまたらすリドルスター』より)でライヴはスタート。その確かな歌唱力でファンを魅了した。何を隠そうカサンドラは、“ガチ”の音楽家だ。高校の音楽科を卒業後、音楽大学にて声楽を専攻し、ウィーンコンセルバトリウムに留学経験がある。主にドイツ歌曲を勉強しており、シューベルトとメンデルスゾーンの歌曲を好んでいるというのだから驚きだ。ウィーン音楽院にて演奏会出演、アクティスドリームコンサート主演、「フィガロの結婚」にて伯爵夫人コンテッサにて出演など、美少女ゲーム音楽もとい、一般的なJ-POP界でもなかなかこれほどのプロフィールの持ち主を探すことはできないだろう。

 ライヴはプロデューサーの新井健史が女装してギタリストとしてサポート。そのためか、本人はかなり緊張していたということだ、楽曲中のMCはそんなことを微塵も感じさせず、ファンをトークで楽しませていた。二曲目は同じ『あまたらすリドルスター』からEDである「星の絆」でしめた。カサンドラはそのプロフィールが示すように外見もポップス歌手というよりもオペラ歌手に近い。モデルなどもこなしているそうだ。まだ美少女ゲーム歌手としてのキャリアはこれからだが、今後多くの場所で見かけるかもしれない。

cl_mini.jpg神曲「巫女みこナース・愛のテーマ」を披露!

 カサンドラの流れのまま、カサンドラ&doubleeleven UpperCut&柏木るざりん&Astilbe × arendsiiというコラボで「Princess Bride!」(『プリンセスブライド』より)を歌いあげ、次に登場したのが柏木るざりんとchu☆からなるchu☆ing Loveだ。chu☆ing Loveのライヴ時だけはライヴ時間よりもMC時間が圧倒的に長いという逆転現象が起きた。柏木るざりんが関西出身のようで、トークがとにかく面白い。いちいち笑いを取り、ファンの前で生着替えまで披露するという誰得なのか分からないサービスまで飛び出した。楽曲は「Love is a “ONE” choice」(『恋愛まで選択肢ひとつ』より)とニコニコ動画などで大ブレイクした「巫女みこナース・愛のテーマ」(『巫女みこナース』より)を披露した。

何をしてもキュートすぎる相良心何をしてもキュートすぎる相良心

 chu☆ing Loveのお次は相良心。彼女は「Keep on Dreaming!」(『超電激ストライカー』より)と「星空のいま」(『星空へ架かる橋AA』より)を熱唱した。見た目はいまどきの20代の女の子という感じなのだが、この世界に入る前に、milktubの楽曲に影響を大いに受けたことを告白していた。MCがたどたどしくボケボケのトークではあったものの、それは逆に彼女の武器なように感じられるほど非常に喋りに愛嬌があり、新人らしい元気いっぱいのステージに、今後もっと活躍の場が広がっていくだろうと予感させた。

すばらしい声量の西沢はぐみすばらしい声量の西沢はぐみ

 次に登場したがの西沢はぐみだ。「愛.D.すくらんぶる!」(『妹びらいざー!』より)と「サクラメント」(『大図書館の羊飼い-Dreaming Sheep-』より)を歌いあげた。さすがにメジャーデビューしているだけあって、すばらしい声量を持ったシンガーだ。1曲目が終わった後、ファンから「かわいい!」というたくさんの声援に「そういうこと慣れてないからやめて!」と応答する彼女の姿は本当にほほえましかった。この後、西沢はぐみ×相良心×Ayumi.でコラボし「みんなのわ」(『ものべの -happy end-』より)を披露するのだが、サプライズが起こる。曲の途中からAyumi.が消え、楽曲終了と共にバースデーケーキを持って登場したのだ。そう、このP.C.M Live! 2014が開催された日はちょうど西沢はぐみの誕生日だったのだ。ケーキには西沢はぐみのアイコンでもあるイカのイラストもきっちりデコーレーションされているという手の込みよう。感激した西沢はぐみは涙を見せていた。

ダチャーンといえばminori!ダチャーンといえばminori!

 フェスも後半戦となり、登場したがの原田ひとみだ。メジャーデビューしていて、声優としての実績も十分なだけに彼女の登場に会場は大いに沸いた。原田ひとみといえばminoriであり、「RUN. EVE. RUN」(『12の月のイヴ』より)と「ever forever」(『ef-the first tale』より)を熱唱。正直なところ、原田ひとみの登場でステージの雰囲気は一気に締まった。原田ひとみ自身はツイッターなどでは壊れた言動を見せるつかみどころのない不思議系キャラなのだが、歌わせると全く別人となる。この日のライヴMCで普段のおかしな部分が見え、原田ひとみらしいものだったものの、しゃべり過ぎず、出るところは出て、引くときは引くというライヴの間合いの取り方をよく分かっているプロのステージだった。

完璧なステージを披露したAiRI完璧なステージを披露したAiRI

 原田ひとみに続いたのがこちらもメジャーデビューしているAiRIだ。彼女もまた登場の瞬間から魅せてくれた。ヴァンパイアを意識したという怪しい動きで現れたのだ。この日、袖から出ながらパフォーマスを見せてくれたのはAiRIだけだった。この辺りのエンターテイナーとしての在り方はキャリアに裏付けされたものであり、さすがと言える。ステージからファンへの煽りも含め、まさにミュージシャンのライヴだった。曲は「baby」(『赤さんと吸血鬼。』より)と「プリズミック」(『プリズム◇リコレクション!』より)を披露。

みんなの目標である佐藤ひろ美が大トリ!皆の目標である佐藤ひろ美が大トリ!

 AiRIのライヴが終わると、そのまま佐藤ひろ美、相良心が登場し、3人のコラボで「ガッデーム&ジュテーム」(『ガッテーム&ジュテーム』より)を披露。そのまま佐藤ひろ美がステージに残り、ラストのパフォーマンスとなった。しかしここでちょっとハプニングが起きる。1曲目の「夏のファンタジア」(『黄昏のシンセミア』より)のイントロが流れるとすぐに曲を止めたのだ。なんと、「歌詞が飛んだ」とのこと。こういうハプニングもライヴならでは。逆にレア感が高まり、こういうミスもファンとしては嬉しいものでもある。もしかしたらこのミスもベテランならではのファンサービスか? その後は無事に歌い上げ、「ハローグッバイ」(『グリーングリーン3』より)でしめた。

 最後は出演者全員でP.C.M Live!テーマソングである「True end.」で終幕となった。少し意外だったのが、前回まであったシークレットゲストがなかった。それにはAyumi.の深い意図があった。美少女ゲーム業界の特典ありきの現状、つまりはゲーム本体よりも特典の価値の方が上回りかねない逆転現象について考え直してほしく、ライヴも最初からシークレットありきと思ってほしくなかったそうだ。純粋に本編を楽しんでもらいたいという思いから、ゲスト無しという方向を取ったらしい。美少女ゲームを誰よりも愛している彼女らしい考えだ。

出演者全員でパシャリ出演者全員でパシャリ

 違法ダウンロードや表現規制など、いま美少女ゲーム業界が抱えている問題はかなり根深い。簡単に構造改革できるものでもなく、その問題点を一番理解しているのはメーカーやその関係者だろう。しかし、業界が縮小されていると言われるなかでもそれを食い止め、業界を守ろうという意識をファンとメーカー、そしてアーティストたちを結びつけているのはP.C.M Live!のようなイベントではないだろうか。

 今後、業界とファンを結び付けていくP.C.M Live!のようなイベントがどんどん増えていけば、業界が変わっていく一つの潮流となるかもしれない。
(文=Leoneko)

12の月のイヴ 豪華版

12の月のイヴ 豪華版

EDをAstilbe × arendsiiが担当しているお!

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