声優誌レビュー「声優グランプリ」2014年6月号

“謎センス”のコピーにも注目!? 連載企画を上手に再利用して、書籍化と別冊付録で読者を惹きつける「声優グランプリ」

2014.05.30

――昨今の声優人気に伴い、気がつけば声優専門誌も定期・不定期を合わせて10誌以上が刊行されている。そんな“声優誌 群雄割拠”の時代にあって、各誌はどのような記事・企画をとりあげているのだろうか? 主要な声優誌を中心に、目玉記事や気になる企画などを紹介しつつ、各誌の特徴を分析していく――

声優グランプリ2014年6月号
出版社…主婦の友インフォス情報社
発売日…5月10日(毎月10日発売)
価格……1167円+税
創刊……1994年

「声優グランプリ」(以下、「声グラ」)6月号の表紙は水樹奈々。3公演を収録した前代未聞の7枚組DVD(BD版は4枚組)『NANA MIZUKI LIVE CIRCUS×CIRCUS+×WINTER FESTA』のリリースに合わせ、巻頭特集としても登場している。

 先月のレビュー(参照)で「声優アニメディア」(学研パブリッシング)が写真集攻勢を仕掛けていることに触れたが、これに対して今月の「声グラ」は竹達彩奈のフォトブック発売を本誌で発表。彼女が2年間続けた連載企画『Ayana in Fairy Tales』を1冊にまとめたもので、過去には悠木碧寿美菜子らも同誌の連載をまとめたフォトブックを発売している。

 連載企画の書籍化にあたり、新しく撮り下ろしカットを掲載することもある。しかし、ゼロから書籍をつくる労力に比べれば圧倒的に負担が少なく、編集部にとっては「オイシイ企画」と言えるだろう。もちろん、すべての連載が書籍化されるわけではなく、利益が見込めると判断された一握りの声優に限られる。事実、「声グラ」の連載企画は約30本と多いが、これに対してフォトブックの発売は年2冊程度。多くの連載を抱えつつ“売れる声優”を見極めているのだ。

 ただし、書籍化されなかったとしても、過去の連載を上手に本誌の売り上げへと繋げるのが「声グラ」のニクいところ。たとえば、今月号の別冊付録『アイドルマスター シンデレラガールズ・DEBUT STORY』が良い例だ。この付録は、過去に不定期で掲載していた『アイドルマスター シンデレラガールズ』の記事を再構成し、新たに撮り下ろしインタビューとライブレポートを加えた小冊子である。

「声優アニメディア」でも連載をまとめた別冊付録は存在し、今月号でもアニメ『ノラガミ』出演者の短期連載をまとめた小冊子が封入されている。しかし、それでも「声アニ」の別冊付録を評価するのは装丁の豪華さだ。「声グラ」の別冊付録は紙質が良く、表紙に防水加工が施されているものが多い。手に取ったときの満足感が大きく、ファンには嬉しい保存版なのだ。

 さて、そんな“連載巧者”の同誌が、今月号から新たに島崎信長の『ノブライフ』の連載を開始した。毎月、島崎をオシャレにコーディネートするというファッション企画で、連載第1回のテーマは「モッズ」。甘いマスクに細身のスーツがよく似合っているが、気になったのは吹き出し調の文言である。島崎の写真に添えられた吹き出しには「少年老い易く学成り難し But……! We are the MODS!」とあるのだが、この意味がわからなかった。

 この諺とモッズに何か関係があるのか、はたまた島崎が演じたキャラと関係があるのか……。自分が無知なだけだろうと調べてみたが、残念ながら関係性が見えなかった。強引に解釈すれば「若いうちから勉学に励まなくてはいけないが、労働者には関係ない(モッズはロンドンの若い労働者層に流行したファッション)」ということだろうか? おそらく島崎本人の言葉ではなく、編集部が考えたものと思われるが、なかなかに挑発的な内容だ。果たして、来月以降も吹き出しの台詞は登場するのか? 個人的に、謎のセンスが光るこの新連載をこっそり見守りたいと思う。
(文/神楽坂隆)

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