『テルマエ・ロマエ』の金勢神社に『ピンポン』の片瀬諏訪神社…神社ファンにもおすすめの聖地

 すっかり文化のひとつとして定着した、アニメやマンガの舞台となった土地を巡る“聖地巡礼”の旅。作品に出てくる場所を訪ねるだけではなく、都道府県ごとに分けて楽しんだり、鉄道に絞ったりと、そのバリエーションはじつにさまざま。しかし、要注目なのは“聖地巡礼×神社”のコラボレーションだ。ついには先日、『マンガ・アニメで人気の「聖地」をめぐる神社巡礼』(エクスナレッジ/岡本健)なる本まで登場。『らき☆すた』の聖地である鷲宮神社や、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』に出てくる秩父神社は、地域の活性化にも貢献する言わずと知れた聖地だが、ほかにも聖地となった神社はたくさんあるのだ。

 まずは、連載開始からの20周年記念プロジェクトとして、新作アニメの公開が決まったり、さまざまなグッズが発売されるなど、再び注目を集めている『美少女戦士セーラームーン』から。この作品では、火の戦士・セーラーマーズとして活躍する火野レイが、巫女として「火川神社」に住みながら、宮司である祖父の手伝いをしている。だから、作中でも彼女が巫女装束をまとい、鳥居の前を掃除するシーンや薪木を入れて火を焚き、そのなかに供物を投げ入れて祈る護摩焚きを行うシーンが見られるのだ。そんな火川神社の元になったのが、元麻布にある「氷川神社」。拝殿の外観や鳥居などはそっくりなので、そこから作品に思いを馳せることもできる。それに、氷川神社は全国に200社もあり、港区内だけでもこの元麻布のほかに白金、赤坂の2つがあるのだが、それぞれ祭神も異なっているので、その違いを見てまわるのも楽しいかもしれない。

 また、現在アニメが放送されている『ピンポン』は、かつて実写映画化もされた大人気の卓球マンガだが、ここでも神社は重要な場所として登場する。舞台となるのは、神奈川県にある片瀬諏訪神社と江島神社。なぜ、卓球マンガと神社が……? と思った人もいるかもしれないが、神社は子どもたちの遊び場としてもさまざまな作品で使われているのだ。『ピンポン』でも、主人公のペコこと星野裕とその幼馴染でスマイルと呼ばれている月本誠が、神社で会話するシーンは多い。小学生の頃は、いじめられていたスマイルのヒーローになるため、ペコが仮面をつけて奮闘、スマイルに卓球を勧めたのもこの場所だ。高校にあがると、卓球部顧問のやり方に反発したスマイルが、江島神社の黄金浄水の前で「勝つために誰かを引きずりおろしたり、したくないんだ」と自身の卓球観を語ることもあったし、ペコの特訓の場にもなった。神社は彼らの関係性や成長を見守るのにも欠かせない場所だが、片瀬諏訪神社に祀られているタケミナカタノカミの話を知ると、もっとおもしろい。『古事記』によると、タケミナカタノカミはアマテラスが派遣したタケミカヅチとの力比べに敗れて信濃国の諏訪の湖まで追いつめられ、そこで謝罪して出雲を譲り渡し、諏訪の地から出ないことを誓って許されたそう。こういった神社の背景も知って観ると、作品をまた違った見方ができるかもしれない。

 そして、映画が公開されている『テルマエ・ロマエ』にも、岩手県にある金勢神社で開かれる金勢神社例大祭の様子が描かれているのだが、実は温泉と神にも昔から深い関係があるようなのだ。金勢神社には男性器を模した御神体が祀られており、金勢神社例大祭ではこの御神体を温泉で洗い清めるのだが、それも「古来温泉を女陰に見立て、温泉が湧き続けることを願った」から。かつて、「温泉そのものが人々にとって聖なるもの」だったからだという。また、各地の金勢様は子宝や出産だけでなく、作物の豊穣を願うものも多い。そして、古代ローマにも「ティンティナブラム」という男性器をかたどった御神体があるのだが、これも日本と同じく、豊穣と関連づけられているそう。こんなふうに、時代や国境を越えたところまで繋がっていることを知ると、もっと興味が湧いてくるだろう。

 作品自体が神話に関わっているものや登場人物が神社の関係者というもの、背景の一コマや遊び場としてなど、さまざまな形でマンガやアニメと関わっているからこそ、神社が聖地となっている作品はまだまだたくさん存在している。“聖地巡礼”と“神社”、それぞれがブームを巻き起こしているので、今後はこの組み合わせが新たなブームとして注目され、相乗効果でますます盛り上がっていくのではないか。
(文/篠山サクラ)

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