声優誌レビュー「Pick-up Voice」2014年6月号

インタビューの濃さは他誌の2倍近く!? 「Pick-up Voice」が声優を“狭く深く”掘り下げられる理由

2014.05.10

――昨今の声優人気に伴い、気がつけば声優専門誌も定期・不定期を合わせて10誌以上が刊行されている。そんな“声優誌 群雄割拠”の時代にあって、各誌はどのような記事・企画を取り上げているのだろうか? 主要な声優誌を中心に、目玉記事や気になる企画などを紹介しつつ、各誌の特徴を分析していく――

Pick-up Voice(音楽専科社)2014年6月号。

Pick-up Voice2014年6月号
出版社…音楽専科社
発売日…4月26日(毎月26日発売)
価格……1139円+税
創刊……2007年

「Pick-up Voice」6月号の巻頭大特集は『Kiramune Music Festival 2014』。CONNECT(岩田光央、鈴村健一)、神谷浩史ら男性声優10名が所属する音楽レーベル「Kiramune」のライブの模様を16ページにわたって取り上げている。

 ほかにも巻末大特集のpetit milady(悠木碧、竹達彩奈)で9ページ、宮野真守で8ページ、内田真礼、鈴村健一、スフィアで各5ページと、1テーマに割くページ数が多いのが同誌の特徴だ。「声優グランプリ」や「声優アニメディア」は1ページの企画(連載含む)も多く、さらにモノクロページでは、より細かい枠組みの声優関連情報も掲載されている。しかし、オールカラーで76ページの「Pick-up Voice」は、あえて細かい情報をカット。毎号“狭く深く”掘り下げるのが同誌のカラーであり、まさに“ピックアップ”なのだ。

 その結果、競合誌と同じテーマを扱う際は、内容の濃さで同誌に軍配が上がりやすい。たとえば、今号で月刊3誌が揃って取り上げた宮野真守のページ。各誌ともに4月末に発売したライブDVDについて扱っているのだが、その記事スペースは「声グラ」が約2250文字、「声アニ」が約1500文字であるのに対し、「Pick-up Voice」は約3800文字と頭ひとつ抜けている。

 記事スペースが増えれば、必然的に内容は濃くなっていく。他誌がライブの話題に特化せざるを得ないなか、同誌では宮野のツアータイトル“~TRAVELING!~”にちなみ、「旅」に関する話題にまで言及。ツアーに欠かせない必需品からプライベートの旅行の思い出まで、より深い部分に迫っているのだ。

 また、記事スペースの大きさは内容の濃さ以外にもメリットがある。有り体に言えば“読みやすい”のだ。一見、短い文章のほうが読みやすいと思うかもしれない。しかし、会話形式で展開されるインタビュー記事において、文字量が少ないとインタビュアーの質問文がおざなりになりがちなのだ。というのも、取材対象の話を多く掲載しようとすると、その分だけ質問文を短くする必要がある。結果、会話というよりも一問一答のような単調な記事になりやすい。

 もちろん、「声グラ」や「声アニ」のライター陣も優秀なので、短い質問文でもスムーズに会話が流れるよう上手に構成されている。しかし、記事スペースに余裕のある「Pick-up Voice」では、より違和感のないクロストークが展開できる。このため、随所にインタビュアーの見解を挟む余裕も生まれ、記事に個性を出しやすくなるのだ。

「インタビュアーの見解など不要」と考える読者も多いかもしれない。だが、その見解を受けた取材対象者が思考を巡らせ、どう答えるのか──という一連の流れはインタビュー記事の醍醐味のひとつ。その魅力を感じやすい雑誌が、1テーマずつ深く掘り下げるスタイルの「Pick-up Voice」なのだと思う。
(文/神楽坂隆)

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