アニメ『ピンポン』やアカデミー賞のノミネート作でも使用! “Flashアニメ”の境界線

 一方04年に注目されたFlashユーザーとしては、ネットで自身のイラストが注目され、テレビアニメシリーズ『BECK』でアニメーターとしていきなり原画デビューをすることとなったりょーちもさんがいる。りょーちもさんは、作画の際にFlashを使用していることでも有名だ。しかし当時、りょーちもさんがFlashユーザーであることは、アニメ業界以外では今ほど知られていなかった。この情報格差は、先日(参照)も記したように、IT業界など、Flashを扱う界隈によって得ている情報が異なっているのも一因としてあるだろう。

 しかし今回の場合、各業界の情報格差とは異なり、FROGMAN監督のようにFlashで作品を完パケするユーザーと、りょーちもさんのように作画の一部でFlashを利用するユーザーの間で接点の薄かったことが、“Flashアニメ”という言葉についての混乱を引き起こしていた。

 例えば00年代前半の“Flash黄金時代”と呼ばれていた時期、「2ちゃんねる」のFLASH・動画板で行われた「紅白FLASH合戦」やオフ会イベントの「FLASH★BOMB」などを思い出す人も多いだろうが、これもどちらかというと完パケユーザーの界隈の話だった。

 一方、りょーちもさんが作画監督を務めた08年のテレビシリーズ『鉄腕バーディー DECODE』では、A-1 PicturesにFlashの制作ラインが敷かれたことで驚かれた。この一件もアニメ業界を賑わせたものの、基本的に完パケユーザーの間で話題になることはなかった。

 りょーちもさんが完パケユーザーとの接点で話題になった例としては、12年のMV『日本橋高架下R計画』がある。このMVを監督した細金卓矢さんは、テレビシリーズ『四畳半神話大系』のエンディング制作でアニメ業界界隈にも知られるようになった。細金さんはモーショングラフィック制作など、もともと完パケユーザー界隈で知られていた。このMVには、プロや学生までが入り乱れて制作に参加していたのが特徴的だった。りょーちもさんと同じくFlashを用いるタイプのアニメーターとしては、山下清悟さんやらっパルさんなどが参加していた。

 なお、りょーちもさんは10年のOVA『夜桜四重奏~ホシノウミ~』、13年のテレビシリーズ『夜桜四重奏~ハナノウタ~』で監督を務めている。作品が何で制作されたかの基準は、CGやコマ撮りなどでも同様にキャラクターの作画で判断されることが多い。先の『アーネストとセレスティーヌ』の場合は見た目の雰囲気もあるだろうが、りょーちもさんについては、監督した作品が“Flashアニメ”と呼ばれることはない。見た目やキャラクターの作画や使用したソフトだけでなく、本人の出自や来歴も判断基準とされるのではないかと思わせる事例になっている。このように揺れ動く“Flashアニメ”という言葉だが、今後この言葉はどのように流通していくのか? それとも廃れていくのか? その趨勢に注目していきたい。
(文/真狩祐志)

■東京アニメアワードフェスティバル
http://animefestival.jp/
■夜桜四重奏
http://yozakura-anime.jp/

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