声優誌レビュー「声優アニメディア」2014年5月号

井上麻里奈に続く大ヒット増刷は誰!? 「声優アニメディア」が仕掛ける声優写真集・戦略は吉と出るか?

2014.04.23

――昨今の声優人気に伴い、気がつけば声優専門誌も定期・不定期を合わせて10誌以上が刊行されている。そんな“声優誌 群雄割拠”の時代にあって、各誌はどのような記事・企画をとりあげているのだろうか? 主要な声優誌を中心に、目玉記事や気になる企画などを紹介しつつ、各誌の特徴を分析していく――

「声優アニメディア」2014年5月号(学研パブリッシング)

■「声優アニメディア2014年5月号
出版社…学研パブリッシング
発売日…4月10日(毎月10日発売)
価格……1204円+税
創刊……2004年

 ニューアルバム『SUPERNAL LIBERTY』を発売した水樹奈々が表紙を飾った「声優アニメディア」(通称「声アニ」)5月号。巻頭13ページの特集は彼女の豊富なグラビアもさることながら、アルバム収録の全15曲セルフレビューがなかなかの読み応えだった。

 しかし、今月気になったのは水樹奈々よりも、その次に登場する寿美菜子のページだ。ニューシングル「Beliebe ×」と初写真集『MINAKO style』に関するインタビューが綴られているのだが、この「初写真集」の文字に目が留まった。というのも、今月は「声アニ」よりも先に「声優グランプリ」(主婦の友インフォス情報社/参照)に目を通しており、そこでは彼女の新譜に関するインタビューは掲載されていたものの、初写真集の情報は一切触れられていなかったからだ。

 彼女の写真集の情報解禁は3月上旬だったので、当然ながら「声優グランプリ」も把握しているはずだ。見落としたのかと思い、再度「声優グランプリ」の記事に目を通すも、やはり写真集の情報は書かれていない。……と、ここまで書けば察しの良い人はすでにお気づきだと思うが、彼女の写真集は「声アニ」と同じ学研パブリッシングの発行である。「声優グランプリ」に写真集の告知がなかったのは、いわゆる“オトナの事情”というヤツなのだろう。

 まあ、当然と言えば当然である。なにしろ「雑誌が売れない」と言われて久しい出版業界だ。「雑誌が売れないなら、増刊や書籍を出して利益を上げろ」と上層部からせっつかれる光景は珍しくない。好況時よりも仕事量が増えるという負のスパイラルの中、ライバル誌に塩を送るような告知は難しいだろう。改めて厳しい業界だなと思いつつページをめくると、なんと寿美菜子に続いて三澤紗千香の記事でも初写真集発売の情報が……。もちろん、彼女の写真集の発行も学研パブリッシングであり、編集は「声アニ」編集部である。

 そう言えば、小倉唯も6月に同社から高校卒業記念写真集を発売する予定だ。「声アニ」編集部による声優写真集は、1月発売の宮野真守のフォトBOOKを含めて今年すでに計4冊。昨年、フォトBOOKを含め同社が手がけた声優系写真集の刊行が計2冊だったことを考慮すれば、そのハイペースぶりがうかがえるだろう。しかし、「声アニ」編集部は昨年5月に発売した『井上麻里奈 Marilro』で増刷を勝ち取った実績がある。近年、声優に限らず写真集の売れ行きが芳しくない中、これは大成功と言っても差し支えない結果だ。上半期、立て続けに発売予定の「声アニ」発の声優写真集。この戦略が吉と出るのか凶と出るのか、本誌だけでなく写真集の売れ行きも気にかかるところだ。

 このほか、「声優グランプリ」では大特集が組まれた春アニメ企画を「声アニ」がスルーしている点も興味深い。代わりに、『ノラガミ』や『とある飛空士への恋歌』など、前クールアニメの放送終了後インタビューが掲載されている。いずれも短期連載として、先月号までクライマックスの話などを聞き出す構成だったが、やはり最終回を迎えないと話せない内容もある。たとえば『とある飛空士の恋歌』では、竹達彩奈悠木碧が最終回後の主人公たちの身の振り方を想像するなど、放送終了後ならではの話題は必見。今月号は改編期の発売とあって、声優誌間でも明確に誌面の特徴が現れる格好となった。
(文/神楽坂隆)

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