ペリーヌ、トム・ソーヤー、ビッケ…名作アニメのキャラクターが瑞々しいイラストで蘇る！『関修一の世界』

• ツイート
• 

『関修一の世界――キャラクターデザイン・ワンダーランド』（東京書籍）より／『ペリーヌ物語』©NIPPON ANIMATION CO., LTD.　公式ホームページ http://www.nippon-animation.co.jp

　それにしても、関氏の描くキャラクターのなんと瑞々しいことか。ページをめくるごとに、キャラクターの息遣いや生活音が紙の向こうから聞こえてくるかのような生々しさと存在感。そして繊細さとある種の艶っぽさに圧倒されるばかりだ。個人的な感想になってしまうが、とりわけ『ペリーヌ物語』の主人公・ペリーヌの表情を大きく描いた「ペリーヌ13歳の旅立ち」は白眉である。関氏が『ペリーヌ物語』で挑戦したシンプルなラインを残しつつ、そこはかとない色気を感じさせるリアルなタッチがたまらない。

「キャラクターデザインをするうえで、森康二さんからは多大な影響を受けました。あの人ほど少ない線で立体的に形を取れるアニメーターはいないと思います。『ペリーヌ』の前に森さんがやられていた『アルプスの少女ハイジ』を見て、“アニメでこういう作品もできるんだ”とガツンとやられたような気持ちになったことを覚えています。その後の作品だから、『ペリーヌ』のキャラクターデザインをした時はえらく緊張しましたね」（関氏）

　そう当時を回顧する関氏だが、40年近くの時間を経て描かれるペリーヌの表情は、アニメの作画に比べてより温かさと柔らかさが感じられる、“優しいタッチ”になっている。

『関修一の世界――キャラクターデザイン・ワンダーランド』（東京書籍）より／『トム・ソーヤーの冒険』©NIPPON ANIMATION CO., LTD. 公式ホームページ http://www.nippon-animation.co.jp

　そのほか、バイキングたちの賑やかな日常がポップなタッチで描かれる『小さなバイキング　ビッケ』、19世紀のアメリカの風景の中で元気に駆け抜ける少年たちの姿を捉える『トム・ソーヤーの冒険』など、ページをめくるごとに各作品のキャラクターたちの日常風景が躍動感たっぷりに描かれている。キャラクターたちが送っていたであろう、劇中では描かれなかった日常のワンシーンを切り取ったスナップショット集。そんな印象も受ける一冊となっている。

　また、本書にはイラストのみならず関氏のキャリアを思い出の写真とともに辿った仕事一覧や、ラフイラストなど秘蔵の資料とともに、いかにしてキャラクターデザインが完成するかを追いかけたテキストが収録されている。

　さらに『アルプスの少女ハイジ』をはじめ「世界名作劇場」シリーズを数多くプロデュースした、現・ベガエンタテイメント代表取締役・松土隆二氏、「世界名作劇場」シリーズで共に作品作りに勤しんだ楠葉宏三監督、関氏に憧れて業界に入ったという寺本幸代監督（代表作は映画『ドラえもん　のび太のひみつ道具博物館』など）を交えてアニメ業界黎明期の思い出を語る座談会が収録されており（宮崎駿、高畑勲などなどアニメ黎明期から活躍する大御所たちの名前がバンバン飛び出してくる！）、そこかしこで関氏のキャリアの偉大さと人なつっこい人柄がうかがえることだろう。魅力的なキャラクターを生み出すアニメーターとはどんな人間なのか、という視聴者の素朴な疑問にも答えてくれることだろう。

　イラストとテキスト。そして秘蔵の資料から、幼き日の僕たちが親しんだキャラクターたちをより身近に感じることができるようになる。そんな思い出がいっぱい詰まったアルバムのような一冊だ。
（取材・文／有田俊[シティ・コネクション]）

■『関修一の世界――キャラクターデザイン・ワンダーランド』
定価：本体3000円（税込3240円）
A4判・並製・144ページ・オールカラー
2014年4月21日発売
問い合わせ先：東京書籍　出版営業部
TEL　03-5390-7531
※本書の刊行を記念して、「『関修一の世界――キャラクターデザイン・ワンダーランド』出版記念原画展」を開催いたします。
期間：2014年4月30日(水)～5月6日(火)
場所：丸善日本橋店3階ギャラリー
時間：9：30～20：30（最終日は17時閉場）
問い合わせ先：丸善日本橋店
（103-8245東京都中央区日本橋2-3-10　Tel :03-6214-2001）

 
• 前のページ
 
• 1
 
• 2