ファンサービスか、手軽なドーピングか? 『男塾』『刃牙』など、次々に再始動する人気マンガの成否は?

1404_rev_manga.jpg週刊漫画ゴラク(日本文芸社/2014年4月18日号)

 4月4日発売の「週刊漫画ゴラク」で、宮下あきら氏による新連載『極!!男塾』(共に日本文芸社)がスタートした。1980年代に一世を風靡した『魁!!男塾』(集英社)から始まる“男塾”シリーズ、その第三部にして最終章に位置づけられる物語だ。第1話の展開は“未知なるエネルギーを求めて日本男児の睾丸を狩るべく侵攻してきた宇宙人に対し、男塾の戦士たちが地球を救うため立ち上がる”というもの。さっぱり意味がわからないと思うが、筆者としても読んだことをありのまま話したポルナレフ状態(by『ジョジョの奇妙な冒険』)なので安心してほしい。要は、平常運転の“男塾”ということだ(最新号には第2話が掲載中)。

 このように連載終了した有名タイトルが、新作として復活してくる例はきわめて多い。先月には「週刊少年チャンピオン」で『グラップラー刃牙』シリーズの最新作『刃牙道』(すべて秋田書店)が始まったばかり。ほかにも『北斗の拳』(集英社)は『蒼天の拳』(新潮社)として、『銀牙 -流れ星 銀-』(集英社)は『銀牙伝説WEED』(日本文芸社)として、『聖闘士星矢』(集英社)は一連の『聖闘士星矢 冥王神話』(秋田書店)シリーズとして……「週刊少年ジャンプ」(集英社)全盛期を支えた1980~90年代の作品中心に、数多くの続編が描かれている。「週刊少年サンデー」連載の名作ラブコメ『タッチ』から26年後を描く『MIX』(すべて小学館)が2012年に始まったときも旧作ファンを驚かせた。

 作者からすれば慣れ親しんだ世界観とキャラクターで続きを描ける、出版社(編集部)からすれば有名作の続編ということで宣伝コストをかけず一定の人気が見込める、ファンからすれば好きな作品をもう一度読めるということで“いいことずくめ”のようにも思える。しかし、必ずしも手放しに喜べることばかりでもない。今回連載が開始された『極!!男塾』について、読者の反応としては超展開にツッコミをまじえつつ「これぞ男塾」「大人気間違いなし!」などとして好意的に受け入れられているが、一方で安直な連載再開によるクオリティの低下、大幅に変更された設定・キャラクターに旧作読者がついていけないなど“続編だからこそ起こってしまう問題”を抱えるケースもある。

 傑作ハードボイルドコメディ『CITY HUNTER』(集英社)のリメイクとなる『エンジェル・ハート』(新潮社)は、厳密な続編ではなくパラレル世界の物語であるが、“待望の続編が出たと思って喜んだら、旧作のヒロインがいきなり死亡していた”と強い拒絶反応を示すファンも少なくなかった。このように叩かれるならまだマシで、『鉄鍋のジャン!』(秋田書店)『逆境ナイン』(徳間書店)『ザ・モモタロウ』(集英社)などは旧作こそ一定の人気を得ていたが、続編は大きな話題にもなることなく、ひっそりフェードアウトしていった。

 作者は続編を描くつもりがなかったにも関わらず、編集部主導で再開が決まってしまった作品もある。たとえば、作者が前約束を忘れていた中での新連載となった『覚悟のススメ』続編の『エクゾスカル零』(共に秋田書店)や、冗談めかしながらも単行本のあとがきによれば『機動戦士クロスボーン・ガンダム』シリーズ最新作の『クロスボーン・ガンダム ゴースト』は、作者のあずかり知らないところで連載が決まったと公言されている。幸いなことにどちらも作者の力量が高いおかげで続編も好調だが、普通ならトラブルが起きていてもおかしくない。

 さまざま課題点を抱えながら、時代を超え、出版社や掲載誌を移し、ときには設定すら変え……おそらくこの先も“有名マンガの復活”は増えていくことだろう。それをファンサービスと捉えるか、新人発掘をさぼった編集部の怠慢と捉えるか、読み手である皆さんはどうお考えだろうか?
(文/浜田六郎)

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ターゲット層を代えるとウケることもある。

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