クリリンを応援していた頃の僕は、高校3年生。彼女もなく、ただ受験勉強のために、河合塾の美術コースに通う日々だった。美術予備校で絵を描くのは、とてもつまらない。金になるわけでもないし、よくわからない教師に、上から目線で悪口を言われる。美大生が教えていることが多いのだが、何年も浪人して入った威張りたいだけの人が多かった。
その中に、やたらマンガの悪口を言う先生がいて、
「マンガなんて、一瞬の流行りなんだよ。芸術とは言えない。もう数年後には今一番人気のドラゴンなんたらってマンガだって、誰も覚えていないんだよ!! ジブリのアニメだってそうだ。芸術をやりたいならダヴィンチのような普遍的な作品を目指せ!!」
なんて言いながら、生徒を蹴ったり、デッサンモデルのお姉さんを口説いたりしていた。
一瞬の流行りじゃなくて、24年も経った今も、大人気である。まあ、威張ってる教師の言うことはたいてい外れるのが、世の常なのだが。
そんな鬱屈した日々を送る高校生だったが、『ドラゴンボール』の世界も、なかなか鬱屈してた。とにかくクリリンは、フリーザたちには全く歯が立たない。逃げて、隠れて、右往左往してなんとかドラゴンボールを回収していく。ストレスのたまる展開である。
やっと、孫悟空が到着した時には、クリリン、悟飯、ベジータたちは、ギニュー特選隊と戦闘中だった。ボス前のキャラなのに手も足も出ない……という展開は、サイヤ人編ではナッパや栽培マンとの戦いで見られたパターンである。ボスだったベジータも、逆の立場になっている。
今思い返せば、地球で戦っていた当時のベジータの自信ってどこから来ていたのだろうか? 当時のベジータより強いやつは、結構たくさんいる。
とにかく、なんとか悟空が到着、手こずっていたリクームはじめ、ギニュー特戦隊を蹴散らす。このままラスボス戦なるか!! と思ったが、ギニューの策略にハマり大怪我を負ってしまい、身体を治すメディカルマシーン行きになってしまう。孫悟空……なかなか活躍が続かないのである。ストレスが溜まる……。
悟空不在のまま、ついにはじまったフリーザ戦。ピッコロを交えての戦いである。ここにきて新しいパターンが生まれる。ボスキャラは変身するのだ。ベジータも大猿に変身していたが、あれは初期の『ドラゴンボール』の設定を上手く活用しただけだった。フリーザ、セル、ブウと、以降出てくるボスキャラはみな、数段階にわけて変身する。
そして、最終形態は決まって、サッパリした感じになる。フリーザの最終形態はつるんとしているが、かなり恐ろしく描かれていた。
〜ベジータは生まれて初めて心の底から震えあがった…真の恐怖と決定的な挫折に… 恐ろしさと絶望に涙すら流した これも初めてのことだった…〜
というナレーションとともに、ガチガチと泣くベジータが描かれている。ベジータ編での、戦いを見ている僕らとしては、
「あれだけ強かったベジータが泣くなんて…」
とかなり強い絶望感を感じる。とても上手い展開である。
そしてここに来て、やっと孫悟空の完全復活。ただし実力は及ばず、フリーザのペースでバトルは進んでいく。
元気玉で追い込むが、倒すことはできず、クリリンはバラバラにされてしまう。それがキッカケで孫悟空は、超(スーパー)サイヤ人に変身する。
ブチ切れてパワーアップするというのは、永井豪あたりから少年漫画ではおなじみな展開だが、『金髪になり、オーラが全身をまとう』と記号化させたのが、とてもわかりやすかった。
『ドラゴンボール』「クリリンのことかーーーっ!!」なかなか活躍できないストレスを一掃した超サイヤ人・悟空の登場のページです。おたぽるは、人気連載、マンガ&ラノベ、連載、名作プレイバック、村田らむ、ドラゴンボールの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!
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