まさに「終わりよければ全てよし」!『Wake Up, Girls!』はアイドルアニメの新たな可能性となったか?

2014.03.29

――毎日、何本ものアニメが目まぐるしく放送されている現代日本。これだけ放送本数が多いと、見るのだって一苦労……。そんな悩める現代オタクのため、「おたぽる」がオリジナル作品を中心にテレビアニメ・レビュー! これさえ読めば、気になるあのアニメのあらすじから評判までがまるわかり!!※本文中には“ネタバレ”が含まれていますので、ご注意ください。

『Wake Up, Girls!』
第12話「この一瞬に悔いなし」

『Wake Up,Girls!』公式HPより。

【今週の極私的見どころ!】
「真夢、飛ぶ」

 決勝ステージでのサビ直前、七瀬佳乃(CV:青山吉能)の決意の一言。そして高く高くジャンプした佳乃……。涙腺崩壊でした。

【今週のおすすめ度】
★★★☆☆
(前回のあらすじはこちら

「どうしよう、どうしよう……こんな時になんで……こんな時に限って」

 怪我で真っ赤に腫れた自らの足を見て、絶望を隠せない七瀬佳乃(CV:青山吉能)。それでも「Wake Up, Girls!」(通称:WUG!/ワグ)メンバーには怪我のことを隠し、痛みをこらえてステージでの音合わせに臨みます。

 しかし明らかに不自然な佳乃の様子を見て、島田真夢(CV:吉岡茉祐)たち6人も異変を察知。楽屋に戻ったメンバーたちは、佳乃の腫れた足を見て愕然とします。「平気です、問題ありません」と強がる佳乃に、マネージャー・松田(CV:浅沼晋太郎)は思わず「無理だろ」とつぶやきました。

「でも、嫌です! 絶対に嫌!!! だったら私抜きで出てください! お願いします……」

 必死でそう訴える佳乃。しかし真夢は佳乃の肩にそっと手を置き、「棄権しよう」と言ったのでした。

「無理すれば、よっぴーなしでもなんとかなるかもしれない。でも、よっぴーがいないステージはだめなの。だって、私が納得できないもの」

 そんな真夢の言葉にメンバー全員が納得。ステージを棄権する流れになっていたとき、突然そこに「I-1クラブ」センターの岩崎志保(CV:大坪由佳)が現れます。志保はWUGメンバーたちの会話を部屋の外で聞いていたのです。

 ステージを棄権すると言いかけた真夢に、志保は「やめさせないわよ」と一言。彼女の後ろには医療班の姿が……! 志保っち、ナイスです!

 佳乃は医療班にテーピングを施され、今日のステージを持ちこたえられる状態に。万全を期して振付のフォーメーションも変更することになりました。18時からの本番に間に合わせるため、7人は必死で新しいフォーメーションを頭に叩き込みます。

 そして遂に「アイドルの祭典」決勝戦が開演。「I-1クラブ」ゼネラルマネージャーの白木徹(CV:宮本充)は開演の挨拶で、2001年9月11日のニューヨーク同時多発テロ事件に言及し、「エンターテインメントとはなんなのか」そして「アイドルとはなんなのか」を語りはじめました。

「その日、ブロードウェイでは1つの新作ミュージカルの上演が予定されていました。しかし、事件直後のニューヨークでは自粛ムードが広がっており、その作品も中止を余儀なくされたのです。しかし、その作品のプロデューサーは、傷ついたニューヨーク市民に対して、むしろエンターテインメントがすることはこれしかないと、いち早くシアターの幕を開けたのです。私は、これこそがエンターテインメントの真髄、そしてアイドルはその一端を担う人たちだと思っています」

 そう語った白木は決勝に出場するグループへの声援を求め、「アイドルの祭典」決勝戦の開会を宣言したのでした。エンターテインメントがニューヨーク市民の気持ちを救ったという話、有名ですよね。

「あれから、もう1年だね……」WUGの決勝ステージが始まる直前、佳乃は足の痛みをこらえながら仙台勾当台公園のデビューライブを思い出していました。「あの時はここに立てるなんて想像できなかったね」と懐かしむ佳乃に、「でも私たち、本当にここにいるんだよ」と真夢。「行くぞ! がんばっぺ! Wake Up, Girls!」の掛け声で円陣を組んだメンバーたちは、ステージへと向かいます──。

 ステージに登場したWUG!を見て、「島田真夢だ」「よくここに戻ってこれたな」とざわつく観客たち。しかし古参ファンの大田邦良(CV:下野紘)率いるワグナー(WUG!ファン)の面々はグリーンのサイリウムを片手に精一杯の声援を送ります。

「それでは聞いてください! 『7 Girls War』」

 怪我をまったく感じさせないダンスを見せる佳乃。彼女をサポートしながらパフォーマンスするメンバーたち……。丹下社長(CV:日高のり子)や松田も思わず「やるなぁ、あいつら」と感服。そのパフォーマンスを見て、観客たちも次第にWUG!に魅せられていきます。いつの間にか、場内は緑色のサイリウムの光でいっぱいに。白木とともにステージを見ていた早坂相(CV:鈴村健一)も満足そうな表情。「I-1クラブ」メンバーもその盛り上がりに驚きを隠せません。

 ステージで力を出し切ったメンバーたちは、気持ちが昂ぶり、舞台袖で大泣き。優勝は「赤味噌オールスターズ」に奪われたものの、彼女たちは何か大きなものを得ることができたのでした。

 決勝戦の数日後、WUG!の所属する事務所・グリーンリーヴズエンターテインメントに1本の電話が……。それは都内の大手レコード会社・ビーベックスからの、WUG!メジャーデビュー契約のオファーで……!?

「グリーンリーヴズとWake Up, Girls!の明日はどっちだ!?」



 震災復興を掲げた新たなアイドルアニメとしてスタートし、途中物議を醸すことが多々あったこの作品も、ついに最終回を迎えました。序盤はゲスさの際立つ内容が多かったものの、後半からラストにかけては王道展開でしたね。そして、締めは劇場版と同じセリフで。これには賛否両論あるものの、映画とテレビアニメ、始まりと終わりがリンクするいい演出だったのでは。

 ラストまでハラハラさせてくれた『WUG!』ですが、最終回は筆者的に「この作品、観ていてよかったな」という感想。まさに「終わりよければ全てよし」です。ネット上の反応もまずまずで、「泣いた」「いい最終回だった」とワグナーたちは口をそろえていました。一方、最後まで「????」だった視聴者も多いよう。受け手によって大きく意見の分かれた作品でもありました。

 思えば筆者が劇場版を観に行ったのは、公開初日の1月10日。仙台の風景の美しさとメンバーのパンツ、そしてアイドルアニメの新たな可能性に胸が高鳴りました。しかしその直後、深夜に放送されたテレビアニメ第1話に愕然としたものです。しかし、だんだんとキャラクターにも愛着が湧いていき、後半はなんだかんだ言いつつ毎週楽しみにしていました。

 東日本大震災の復興支援という大きなテーマが消化されたかは、正直微妙なところです。それでも、仙台をはじめとした東北には十分スポットが当たっていたと思います。ラストも仙台の事務所でのシーンで終了したところが、彼女たちはあくまで“仙台のアイドル”だということを表していました。

 最終回で白木の口から9.11の話題が出たのは正直意味がよくわからなかったのですが、どんなことがあってもエンターテインメントは人々を救う、ということなんでしょう。

 ネット上には「若者だけでなくオタクやダメな大人に向けるまなざしもあたたかかった」という意見もありました。確かに、このアニメではほかのアイドルアニメ以上に、アイドルの周りの大人やファンの姿が描かれていましたね。汚い部分も、弱い部分も。最終回では、大人たちにも何か救いがあったように感じました。まあ、最後まで松田が無能だったことは残念でなりませんが。

 続きを予感させるラストでしたが、果たして第2期はあるのでしょうか? 筆者的にはあってほしいです。

 ともあれ、初心者状態からここまで頑張ったキャストの皆さん、そしてヤマカン(山本寛監督)をはじめとするスタッフのみなさん、本当にお疲れ様でした。Blu-ray Discリリースにむけて、作画の修正頑張ってください……! 
(文/ロペ子)

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