描きたいのは“リベラル化したヤンキー”!? 『キルラキル』のセリフに見る本作のメッセージとは?

――毎日、何本ものアニメが目まぐるしく放送されている現代日本。これだけ放送本数が多いと、見るのだって一苦労……。そんな悩める現代オタクのため、「おたぽる」がオリジナル作品を中心にテレビアニメ・レビュー! これさえ読めば、気になるあのアニメのあらすじから評判までがまるわかり!!※本文中には“ネタバレ”が含まれていますので、ご注意ください。

■『キルラキル』
第22話「唇よ、熱く君を語れ」

1403_killla22.jpg『キルラキル』公式HPより。

【今週の極私的見どころ!】
 わかりやすいオマージュが多かった今回、喧嘩部部長・満艦飾マコ(CV:洲崎綾)の復活もあり大盛り上がりです。

 今回は『キルラキル』のメッセージも、あからさまなセリフで出してきてるし、本当にいよいよ大団円に迫りつつあるんですね。あと2回です!

【今週のおすすめ度】
★★★★☆
(前回のあらすじはこちら

 神衣・純潔を脱ぎ捨て、血で全身が真っ赤に染まった纏流子(CV:小清水亜美)は覚醒した初号機(『新世紀エヴァンゲリオン』)のようで、そこにマコが投げた神衣・鮮血(CV:関俊彦)と人衣一体する場面は、まるでコアファイターと上半身、下半身が合体するRX-78(『機動戦士ガンダム』)というか……いわゆる合体ロボ。神衣・純潔を脱ぎ捨て、再び鮮血を身に纏った流子を針目縫(CV:田村ゆかり)が襲いますが、あっさりと跳ね返してしまいます。マコと鬼龍院皐月(CV:柚木涼香)も身につけた鮮血には2人の血も流れおり、そこから溢れるエナジーを得る流子。この手の友情パワーは『キン肉マン』でしょうか?

 この次の流子のセリフに『キルラキル』の思想的なスタンスが表れていると、筆者は思いました。いわく、

「てめえらにはたったひとつのことしか見えてねえ」

「この世を生命繊維っていう一枚の布にすることだけだ」

「でも、そんなことさせねえ」

「世の中はワケのわかんない奴がうろうろしてるくらいがいいんだよ」

 と。これが示すものについては後述したいと思います。

 さて、反撃の流子は、縫にドロップキック。吹っ飛んで、ガレキの山を何回も突き抜けていく姿は、さながら『ドラゴンボール』。そして、断ち切りバサミを奪い取った流子は、縫の両腕を切り落としてしまいます。生命繊維を体内に織り込んで不死身の縫は両腕を元に戻そうとしますが戻りません。なぜなら、断ち切りバサミは生命繊維を断ち切るハサミ。それどころか、縫の両腕の生命繊維を、鮮血が取り込んでしまいます。ここらへんも『エヴァ』っぽい。

 そこに、現れたのが鳳凰丸礼(CV:藤村歩)とCOVERSたち。ヘリに吊るされた縄梯子にぶら下がった鳳凰丸は、縫を『天空の城ラピュタ』のように連れ去ります。“のように”というか、まんまフラップターにぶら下がってシータをかっさらうパズーです。

 一方、COVERSたちは四天王とヌーディストビーチの面々に救急救命吸引具でやられ三昧。COVERSたちから吸い出された人間たちの中には、懐かしの本能字学園の部長たちの姿も! 彼らも、最後の決戦に参加するのでしょうか! 大団円感が漂ってきます!

 さて、縫やCOVERSたちとの戦闘の後、流子と皐月が対峙します。流子は、鬼龍院羅暁(CV:朴ロ美[ロは王へんに路])と対決するためとはいえ、上から目線で周りを支配・管理してきた今までの皐月のやり方が許せず、一発殴ろうとします。しかし、四天王たちが皐月をかばい、「本気じゃない流子に皐月を殴る資格はない!」と宣言します。流子はその行動を「ワケわかんねーよ!」と言いますが、流子も自分がマコや鮮血といった「ワケのわかんない奴ら」に守られていることに気づくのでした。そしてまた、皐月も今までの自分のやり方の間違いに気づいた様子。「なんだかよくわからないものに満ちているからこそ、この世界は美しい」と。

 その後は、マコのママ・好代(CV:福井裕佳梨)の作ったコロッケを囲んでパーティです。溢れるほのぼの感に、ネットの視聴者は「この団欒は嵐の予兆!」と感じているようでした。

 しばしの団欒を終えた皐月たちは、羅暁たちの計画「天種の繭星」を分析。この計画の最終目的は、地球全部を生命繊維の巣にしてから星全体を爆発させ、生命繊維の種子をさらに宇宙に拡げることだといいます。この設定は、映画『ID4』(『インデペンデンス・デイ』)っぽい。そのほかにも、視聴者からは「レギオン」(『ガメラ2 レギオン襲来』)を連想させるという声も。

 羅暁が本能字学園へと向かっていることを突き止めた皐月と流子。いよいよやってきた親子対決にあたって、なかなか「姉さん」と言い出せない流子に、「純潔に流れる流子の血で十分だ」と言う皐月。そして、二人同時のW変身バンクに視聴者も大感動! 2人の姉妹と2着の神衣が揃い踏みです。

 しかし、羅暁の元へと向かう姉妹の後ろでは、「裸の太陽丸」を襲う巨大ロボが出現! あわやというところに飛び出してきたのは、長ランに鉄下駄、焼いた学生帽に三つ葉を咥えたバンカラ番長、といえば! 復活喧嘩部部長・満艦飾マコなのであります! うおおおおお! 視聴者はマコ・コール一色であります!!



 今回は、なんだか、ここのところやかましい世間の様子もあって、やたらとメッセージ性の高い回になっていたような気がします。タイムリーですねー。「鮮血VS.純潔(純血)」という構図も、「現場の生々しさ(多様性)VS.管理や支配(単一性)」 みたいなところに、落ちつく気がしました。

 近年刊行された『世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析』(角川書店/斎藤環)といったヤンキーを分析する書籍などでは、“ヤンキーの特徴”として、「仲間や家族を大事にする価値観」「よくわからない理想より目の前の現実」「ノリと気合で乗り切る美学」などが挙げられています。ヤンキーをめぐる言説では、保守性や排他傾向の強い人たちとしてヤンキーを描くことが多いのですが、今回の『キルラキル』では、現場主義、仲間を大事にする精神や気合といったヤンキーの特徴を逆手にとって、それらを多様性の肯定といったリベラル的理念に応用している気がしました。いわば、“リベラル・ヤンキー”こそが『キルラキル』のメッセージなのかな、と。

 それがいいか悪いかはわかりませんが、とても面白いなあ、と筆者は思ったのでした。
(文/尾野スミ)

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