日本アニメの起源を求めて…メディアミックスを探る産学共同プロジェクトは何を産むのか?

1403_gakkan2.jpg

 続いては角川文化振興財団の角川歴彦理事長による基調講演。「日本のポップカルチャー出版史」と題して、サブカルチャー文化の概説を披露した。「マンガやアニメといったコンテンツの学校を海外に作る」という構想も語るが、なるほど情報学環との連携はそれも視野に入れているのかと納得。
 
 ここまでが第1部。しばし休憩をはさんで第2部へ。

1403_gakkan3.jpg

 第2部は『創造と産業が拮抗するとき』と題して、メディアミックスを中心とした話題に。まずはマーク・スタインバーグ氏による日本のメディアミックス史の解説から。スタインバーグ氏は、媒体を越えて展開してゆく日本独自のビジネス(=メディアミックス)を『Anime’s Media Mix:Franchising Toys and Characters in Japan』(ミネソタ大学出版局刊)という本で紹介している。シールが大ヒットした『鉄腕アトム』のキャラクター商法から始めて「角川商法」と呼ばれる1970年代から始まる角川映画のマルチメディア戦略や、それを継いだ歴彦氏が90年代から始める「世界設定の共有」といった展開方法も解説しており、歴彦氏が苦笑しつつも頷いていたのが印象的。

 とはいえ、かなり荒っぽい論であるのも確かで、後の質疑応答でも「アトムの次が角川映画になるのは納得できない」という声もあった。先の「ポップカルチャー出版史」について、その歴史を特定世代のオタクは原体験として知っているわけで、怪獣ブームやロボットアニメの隆盛等が無いのはどうにも納得がいかないと言う気持ちはある。この『Anime’s Media Mix:Franchising Toys and Characters in Japan』は現在翻訳が進んでおり、角川書店から出版されるとのことなので邦訳を待ちたい。

 ラストとなるディスカッションは『サブカルチャーと言うプラットフォーム』と題して、ニコニコ動画のカワンゴこと川上量生会長を交えて、海外研究者たちとのディスカッション。ニコ生で中継されたので視聴した人も多いかと思うが、こちらも冒頭から川上会長の「そもそもニコ動はプラットフォームじゃない」という発言でいきなり迷走気味に。内容としては、結局はプラットフォームの定義付けから始まって、改めて海外からの研究者の方々にニコニコ動画の詳説をしていた印象である。 

 今回の講座は、例えて言うなら各人が原稿を持ち寄って作った1冊目の同人誌のようなものかと思う。これからお互いに刺激を受けて形になってゆくのではないか。研究職なんてやったこともないライターとしてはそんな例え方しかできないが、やろうとしていることの意義と面白さはわかる。サブカルチャーを学問と言う形で切り分ける際、常に付きまとう「コレジャナイ感」を拭うには時間がかかるとしても、研究である以上は積み重ねが必要。引き続き本講座での研究発表を楽しみに待ちたいところである。
(取材・文/三木茂)

■角川文化振興財団 メディア・コンテンツ研究寄付講座開設記念シンポジウム
 メディアミックスの歴史と未来

http://kadokawa.iii.u-tokyo.ac.jp/sympo2014spring/

■東京大学大学院情報学環
http://www.iii.u-tokyo.ac.jp

■角川文化振興財団メディア・コンテンツ研究寄付講座
http://kadokawa.iii.u-tokyo.ac.jp/

■ 角川文化振興財団 メディア・コンテンツ研究寄付講座開設記念シンポジウム
「メディアミックスの歴史と未来」(番組ID:lv171816124)
http://live.nicovideo.jp/watch/lv171816124

日本アニメの起源を求めて…メディアミックスを探る産学共同プロジェクトは何を産むのか?のページです。おたぽるは、イベント情報・レポイベント情報・レポマンガ&ラノベの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!