この世はトラウマ変態エログロだらけ!

【トラウマ注意】「ちょ…マジやめれって…」恐怖のどん底に叩き落とされた俺的トラウマ漫画3選

2014.03.22

 人によって苦手なものは様々だ。ゴキブリやミミズが苦手というのはある意味、人類共通なので置いておくが、一般的に意外なものを完全に受け付けない、という人は多い。例えば、多くの人がかわいいかわいいとモフる対象の猫や犬が苦手だという人は確かにいるし、泳いでいる魚が嫌いだとか言う人もいる。そう言う人に理由を訊いてみると、子供の頃に犬に噛まれた、猫にひっかかれた、海で溺れた…などの各々の理由があったりする。めちゃくちゃがたいが良くて、プロレスラーみたいな強面男性が犬にビビりまくったりすると、ギャップ萌えが発生したりもするが、当の本人はそれどころじゃない。

 あるものに対して人が生涯苦手になってしまう瞬間、つまりはトラウマになってしまう瞬間は何もリアルな体験だけではない。映画、漫画、小説などの描写による間接的ともいえる体験でトラウマになってしまう人もいる。特に子供の頃だったらなおさらだ。

 そこでどんな漫画がトラウマを植えつけてきたか? トラウマは人それぞれがだが、俺的という観点で3つほどピックアップしてみよう。ひょっとしたら同じような思いをした人がたくさんいるかもしれない。そんなトラウマ話を共有するのは案外楽しいものなのだ。

●メルヘン系カニバリズム!ギャップ萌えならぬギャップグロ!『にんじん大好き!』


『にんじん大好き!』が収録された『魔物語』/松本洋子

 この作品は1993年代に発売された『なかよし』の別冊付録に収録された松本洋子氏の作品だ。松本洋子氏は『なかよし』をメインに漫画家として活動していたが、そもそもミステリーやホラー、オカルトが作品の中心だった。その代表作である『闇は集う』は、オムニバス形式のホラー漫画として評価が高い。

 ホラー漫画というと、絵柄もグロテスクなものを想像するかもしれない。実際、楳図かずお氏や伊藤潤二氏、御茶漬海苔氏の絵柄は見るだけで恐怖を感じさせるものだ。少女漫画系のホラー作家といえば犬木加奈子氏の絵柄は丸みのあるかわいらしさがあると言えばあるが、目の描き方などは異形の何かを感じさせる。

 しかし、松本洋子氏の絵柄はどうかというとごく一般的な少女漫画だ。“THE・80~90年代の少女漫画の絵柄”と言ってもいいだろう。そんなかわいらしい絵柄で描かれた『にんじん大好き!』は短編ながらも、ラストの1コマで全てをひっくり返す衝撃すぎるラストとそのギャップで、読んだ者を片っぱしからトラウマの淵に叩き落していった。あらすじはこうだ。

 にんじんが嫌いな主人公は神様に「にんじんが食べられますように」とお願いをする。すると、次の日から食べ物が全てにんじんに見えるようになる。 お母さんはハンバーグだというのだが、主人公にはにんじんにしか見えない。だが恐る恐る食べてみると、ハンバーグの味がした。これだったらどれが本物のにんじんか分からないや、という理由で主人公はにんじんが食べられるようになり、食べられることでお母さんからはほめられ、むしろにんじんが好きになっていった。
 だがある日、異変が起きる。それまで食べ物しかにんじんに見えなかったのが、猫や鳥までもがにんじんに見えるようになってきたのだ。にんじんが大好きになっていた主人公は「あのにんじんはどんな味なのかな。もしかしたらハンバーグよりおいしいのかもしれない」と思う。
 そして次の日、目を覚ますと目の前に大きなにんじんが立っていた。とてもおいしそうなにんじんで、思わず主人公はそのにんじんにかぶりつくが――。

 『にんじん大好き!』は単行本『魔物語』に収録されている。残念ながら現在は中古で探すしかなさそうだ。amazonで購入が一応できるので、興味ある方は購入してみてもらいたい。

●死姦、食人、スカトロ、ダルマ、ラブドール、人間椅子……あらゆる変態がつまった現代の奇書!これを持っている人間は要注意!?『猟奇刑事マルサイ』


猟奇刑事マルサイ/大越孝太郎(画像の一部に編集部で規制を入れています)

 「この本をワクワクしながら読みおおせたあなた、あなたは人として立派に倒錯しています」

 『猟奇刑事マルサイ』の帯に書かれたロックバンド・人間椅子の和嶋慎治氏のコメントだ。そして、その通りだろう。『猟奇刑事マルサイ』は現代の奇病と言っていいくらいの“変態”、いわゆる性的倒錯者を扱った漫画だ。漫画自体は一話完結型のオムニバスだ。

 全9話が収録されていて、どの話もエログロのオンパレードで、救いようのない結末ばかりだが、この手の変態性を持った人からすればメリーバッドエンドの物語集とも言えるかもしれない。読後にエログロの不快感の他に、博物館や美術館を見終えた後のような妙な充実感もある。それはきっと、大越孝太郎氏の描く絵と世界観が美しいからだろう。古屋兎丸氏や丸尾末広氏が好きな方は読めはずだ。

 ただ、『猟奇刑事マルサイ』の場合、ホラーとかの以前に生理的によせつけない内容、タブーをのぞき見している感覚があるのでダメな人にはトラウマ以前の問題だ。恋人の家にこの本が置いてあったら、色々と注意した方がいいだろう。色々と、ね。

●お友達みーんなを恐怖のどん底に叩き落した伝説の食虫イジメ漫画!『蝉を食べた少年』


よみがえるケイブンシャの大百科 完結編

 最後は『蝉を食べた少年』だ。筆者はグロでも食人でもノーガードで全て受け入れられる自身があるが、唯一苦手なものがある。それは“蝉”だ。蝉だけはどうしても苦手で、鳴き声は全く問題ないのだが、できるだけ姿を見たくない。なぜならこの『蝉を食べた少年』を読んだおかげでガチでトラウマになったからだ。

 『蝉を食べた少年』は大百科シリーズと称した低年齢向けの、今で言う怪談・オカルト系のムック本に収録されたホラー漫画だ。一度読んだら脳裏に焼きついて離れない強烈な絵柄と、子供にはかなりシビアな問題である“いじめ”をテーマにしていること、食虫という低年齢にはおよそ耐えられないだろう精神攻撃を読者に浴びせかけることで、トラウマの山を築き上げた伝説の作品だ。

 だが、『蝉を食べた少年』は単行本化されることがなく、あくまでムック本に収録された形でしか世に出なかった。そのため現物を手にするのはかなり難しい。それがさらにこの作品を伝説にさせた。あらすじを説明しよう。

 主人公は内気でじめられっ子の蝉好き少年。なぜ蝉が好きかと言うと、蝉は7年も地中に埋まっていて、成長して地上で出てきてもすぐに死んでしまう儚さを持っているからだ。少年はそんな蝉の儚さに自分の姿を重ね合わせていた。同じクラスのいじめっこ達がある日、少年の蝉好きに目をつける。いじめっこ達は少年に蝉を無理やり食べさせるなど、いじめを日々エスカレートさせていく。蝉を食べさせられ続けた少年は徐々におかしくなっていく。給食が蝉に見えたり、体の一部が蝉のように変化しているように見えたり……。やがて少年は学校に来なくなる。少年が学校に来なくなったことを少し気にかけるいじめっ子。だが数日して少年が再び登校した。しかしそこには変わり果てた姿が――。

 『蝉を食べた少年』はとにかく絵柄のインパクトが強かった。ホラー漫画特有の濃さとグロさ満載なのだ。そこは『にんじん大好き!』と大きく異なる。物語の中盤からはとにかく蝉・蝉・蝉・蝉。蝉をバリバリと音を立てて食べるシーンや、窓ガラスにびっしりと蝉が止まっているシーンなどは鳥肌が立たずにはいられない。

 先にも書いたように『蝉を食べた少年』を手に入れるのはかなり難しかったのだが、なんと『よみがえるケイブンシャの大百科 完結編』に再録されるという奇跡が起きた。この本もすぐに手に入れられる類のものではないが、DMMやamazonで取り扱っているので興味のある方はすぐに購入したほうがいい。だが、読んでトラウマになっても筆者は責任が持てないのでご注意を。
(文=Leoneko)

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