マンガの野島伸司はもっと過激! 『明日ママ』顔負けのハードな子どもたちを描いたマンガ3選!

1402_child3.jpgSunny(小学館/松本大洋)

 最後を飾るのは『明日ママ』同様、児童養護施設を舞台にした松本大洋氏の最新作『Sunny』。本作は『鉄コン筋クリート』『ピンポン』(すべて小学館)などで知られる松本氏の最高傑作との声も高く、海外でも高く評価されている。

 ワケあって、親と一緒には暮らせない子どもたちが預けられる施設――星の子学園。その庭の片隅に放置された一台のさびれた車・サニーがあった。車内は、大人たちは決して入ってはいけない、子どもたちだけの秘密基地。彼らは、そこで秘密を語らい、エロ本にニヤケ、いつか本当の親と一緒に家に帰る夢を見る……。大人びた落ち着きとナイーブな心を併せ持つ静、ハーモニカが得意で手癖の悪い純助、ハードボイルドを気取りサニーで色んな妄想にふける春男。親元を離れながらもしたたかに、時には傷つきながら懸命に生きる子どもたちを描いた群像劇。

 小学校時代、親から離れて施設で暮らしていた松本氏の実体験が基になっているというが、ここには安直な哀れみも、不幸な身の上への陶酔もない。ともすればお涙頂戴に陥りがちな設定だが、松本氏独特の乾いた描線と叙情にあふれながらどこかズレた会話によって、ユーモアと哀愁が渾然とした独自の作品世界に見事に昇華されている。

 特に第9話『「お日さまて、えらいわ。毎朝かならず来てくれはる」「地球がまわっとんねん」』は必読だ。小学校の授業参観日における園の子どもたちの心の機微を描いたこの回のラストは、切なくも温かく、悲しみと希望が入り混じった複雑な感情が胸に迫る。おそらく現実の子どもたちは、大人たちが考える通り一遍の悲劇の主人公より、はるかに繊細で強靭なのだろう。そしてそうした子どもの頃の視点と感情を、ステレオタイプに堕することなくマンガで表現できたのも、松本氏の手腕があればこそのことだ。



 こうして三作を並べてみると、図らずもそれぞれの作り手の“作家性”が際立つ作品がそろった。もしかしたら子どもをメインとした作品を創るという作業は、自然と創作者に自らの原点を顧みさせてしまうのかもしれない。そう考えると『まことちゃん』(小学館)を描いた楳図かずお氏は、やはり偉大だ、と思うのである。
(文/蜂須賀のぼる)

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