マンガの野島伸司はもっと過激! 『明日ママ』顔負けのハードな子どもたちを描いたマンガ3選!

1402_child2.jpgよいこの黙示録(講談社/青山景)

 続いては、残念ながらこれが遺作となった青山景氏による『よいこの黙示録』(講談社)。

 大学卒業後、ニートを続けていた湯島朝子は、突然地方都市の小学校に採用される。担任を任された四年二組は騒々しいが、男子の五十嵐剛と女子の篠崎桃華という二人のキーパーソンに率いられ、安定しているように思えた。だが一見普通の生徒、伊勢崎大介のある発言がきっかけで、クラスのパワーバランスは混乱。朝子は伊勢崎に、注意を払い始める。「自前の神が欲しいんだ」と朝子に語った彼の目的は、同級生の森ユリカを教祖として、四年二組内に“宗教”を興すこと。その足がかりとして、混乱したクラスをまとめる“奇跡”を演出しようとしていたのだ。そしてクラスの平穏のため、と一時的に協力したつもりの朝子も、次第に伊勢崎の仕組んだカリキュラムにまきこまれていく……。

 実際に学校で採用されている心理テスト「Q-U」や、教祖のカリスマ性を高める手法、より強固な集団を作るために必要な諸段階など、集団心理・印象操作関連の知識やノウハウが、ふんだんに盛り込まれた作品。地元の川にいなくなったはずの蛍の灯を復活させたり、手かざしで牛乳を甘く感じさせるなど、ごく小さな規模の奇跡(と思える出来事)を積み重ねながら、あえて教祖役のユリカの悪い噂を流して、彼女を“タブー化”させるなど、その人心掌握のプロセスや人物配置の緻密さには目を見張るものがある。登場人物の描写についても、伊勢崎の実験対象となる子どもたちは一見無垢で純真に見えるが、家庭や友人関係で子どもなりに複雑な悩みを抱えているなど、牧歌的な画風とは対照的に、極めて生々しい。

 未完のまま最終巻となった2巻に収録されている今後の展開の草案にある暴走族との抗争や、朝子と伊勢崎が性的関係を持つエピソードなどが実際に作品化されていたら、大きな話題となっていた作品だろう。著者の早すぎる死が惜しまれてならない。

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