検証もかなわず…マンガ家をめぐるTwitterの筆禍騒動

1402_twittersoudou.jpg花田少年史(講談社/一色まこと)。


 またまたTwitter利用の難しさを感じさせる騒動だといえるだろう。

 18日未明より、京都精華大学マンガ学部教授などを務める編集家・竹熊健太郎氏が、自身のTwitterでマンガ家・一色まこと氏に関するエピソードをツイートしたところ、「週刊モーニング編集部からの勧告」を受け、関連ツイートについて謝罪、削除する騒動が起こった。

 すでにツイート自体が削除されているため詳細は避けるが、竹熊氏は一色氏について、尊敬の念を込めて、数々のエピソードをツイート。そこには、一色氏が与り知らない状態で進んでいた自身の作品の映画化に際して、一色氏が映画監督に直訴し、映画化を阻止したことなどが記されていた。そのほか、竹熊氏は一連のツイートの中で、一色氏が女性であることを所与の事実として言及していた。

 これらのツイートに対して、ネット上では「ある映画監督ってビオランテの人か」という指摘や「一色まことは女性だったのか」という驚きの声が寄せられることに。一色氏が女性であったことに対しては、特別に秘匿されていた情報ではないにせよ、一定の驚きをもって受け止められていた。これを受けて、「一色まこと先生(女性)の漢らしいエピソード」といったタイトルで、まとめが作られるにまで至った(現在は削除済み)。

 竹熊氏の一連のツイートは、彼が見聞したことを記しているだけで、誹謗中傷の類とはいえないだろう。ただ、これまで大々的に言及されてこなかった性別や、すでに過去の話となっていたであろう映画化に関するトラブルを記したことが、問題になったと推察される。竹熊氏は本件についてお詫びする理由を「(1)私が一色まこと氏についての個人的見聞を元にして、不確かな記憶のまま執筆した結果、幾つか事実誤認が含まれていること。(2)本人の了解を得ずして個人的見聞に基づくツイートを公開したこと」としている。この謝罪の後に竹熊氏は「今回のケースは個人が対象なので、仕方がありません。これが組織相手だったら、私の性格上徹底抗戦しますが、今回は私が悪いのです」ともツイートしている。

 一連のツイートで謎なのは、いったいどの部分が事実誤認であったかということだ。これが雑誌・書籍、あるいはニュースサイトの記事であったならば、事実誤認の部分を明確にした上で訂正がなされたハズである。ところが、今回問題になったのは、あくまで竹熊氏の個人的なツイート。それゆえに誤認事実が拡散されることを防ぐため、削除対応のみが急がれ、検証されることがなかった。竹熊氏は「個人が対象なので」と書いているが、もしTwitterの発言ではなく雑誌記事・書籍上での発言であれば、個人が対象でも徹底抗戦したのではないか。

 Twitterを始めとしたネットメディアでの発言や報道は、一部が切り取られた上で拡散される危険性を常にはらんでいる。それが不必要に対象の個人に対する印象を形作り、歪んだ像を結ぶことも考えられるだろう。竹熊氏自身が言及するように、一度ネットに出た情報を回収することは不可能だ。事実誤認が検証されないまま、情報はひっそりとネット上に残り続けてしまうが、寝た子を起こすわけにもいかない……そうしたジレンマが伺える。今回の騒動は、個人がネット上で広く世に向けて情報を発信する難しさを、改めて明らかにしたものだといえるだろう。
(文/矢師野 三寸)

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