業界への幻想をブチ壊す!? “おカネ事情”を赤裸々に明かしたマンガ3選

■年俸1800万円ってのは全然ダメ!
グラゼニ(原作:森高夕次、漫画:アダチケイジ/講談社)

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 架空の球団を舞台に、プロ野球の世界を“ゼニ”視点で描いた異色作。タイトルの『グラゼニ』も“グラウンドには銭が埋まっている”という意味を込めた主人公による造語である。

 主人公の凡田夏之介はプロ入り8年目の中継ぎ投手。選手としての実力は超一流ではないが、超リアリスト志向で他球団選手の年俸を丸暗記してしまうほど。自分より年俸が低い打者は強気に打ち取り、逆に高年俸の打者相手には萎縮しがちという極端なキャラクターとして描かれている。そんな夏之介視点で、プロ野球業界のあらゆるゼニ事情が語られていく。

 読んでいて驚くのが、夏之介のシビアな“ゼニ”への考え方だ。年俸は26歳で1,800万円。数字だけ見れば、一般サラリーマン年収の3~6倍はあるじゃんと捉えがちだが、彼はそんな甘い考えを許さない。「30を超えたらあと何年できるか分からない商売」「引退の翌年、年収100万円台になった人を僕は何人も知っている!」「プロ野球選手の絶頂期と言われる26歳で年俸1,800万円は全然ダメ」「もっと稼いでいないと“人生の収支”としては全然マズイ」……第1話の初登場シーンから万事こんな調子である。

 主人公がそんなキャラクターだから、話の舞台もマウンド上だけにはとどまらない。契約更改シーズンに繰り広げられる球団vs選手の攻防、選手からラジオ解説者に転身したら年収300万円程度、実績を残してピッチングコーチになれば年収1000万はもらえるといった“引退後”のゼニ事情、30代で一軍に上がれない選手の待遇、プロ野球選手の通勤方法、稼げるプレイヤーの性格論までとにかくネタが幅広い。そしてどんな話でも最後は必ず“年俸”に行き着くのがお約束。とりわけプロ引退後の進路を扱った頻度は、歴史上すべての野球マンガを引っくるめて間違いなくナンバーワンだろう。

 スポーツマンガなのに恋愛話(ほぼ)なし、スポ根要素(ほぼ)なし、子供が読んでプロ野球界に憧れる描写(まるで)なし……という異色ずくめの作品ながら読者人気は高く、マンガランキングでは上位の常連、講談社漫画賞も2013年に獲得している。同じ週刊モーニング連載の『GIANT KILLING』と並び、“定番スポーツを異色の切り口で描いたマンガ”として必見の出来栄えだ。

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