日本人は古くから“男の娘”が大好きだった!? 今最も“神”に近いヒロインを描く「ボクガール」

日本人は古くから男の娘が大好きだった!? 今最も神に近いヒロインを描く「ボクガール」の画像1「週刊ヤングジャンプ」(集英社)公式サイト内の「ボクガール」のページより。

 強い男でありたいのに、美少女に間違えられるほどの女顔に悩む男子高校生・鈴白瑞樹。彼はある朝いつもの男子寮で目覚めて絶叫する。

「無い…無い! 僕のおチンチンが無い!!」

「男の娘(おとこのこ)」が本当に女の子になっちゃうマンガ『ボクガール』が、「週刊ヤングジャンプ」(いずれも集英社)で2014年2号(13年12月12日発売)から連載されている。“男の娘”とは、女の子みたいにかわいい容姿を持つ男の子や、ファッションとして女装する男の子たちのこと。2013年は写真集や専門マンガ雑誌が発売されるなど、男の娘ブームに拍車がかかり、その流れを汲むかのように男の娘が女の子になる今作がスタートした。

 物語の主人公・瑞樹は男らしく生きたいのに女の子のような容姿で、男子から告白されたり好きな女子に男扱いされなかったりと悲惨な日々を送っていた。そこへさらにイタズラの神様・ロキから知らぬ間に体を女の子にされてしまう。好きな娘のため正体を隠して男として学校に通うが、寮の男子に迫られるなどさまざまなトラブルが。瑞樹は果たして恋を成就できるのだろうか!? といったラブコメディ作品だ。

 いわゆる、作中でキャラの性別が変わってしまう「TSF(Transsexual Fiction)」もの。精神が男のまま肉体が女になってしまう今作は、男の娘の女性らしさや女装を究極的につきつめたという意味で、男の娘マンガの亜種と言っていいだろう。現在店頭に並ぶ「ヤングジャンプ」10号で第7話が掲載されてる段階だが、2号連続でセンターカラーを展開するなど早くも人気に火がつき始めている様子。

 作品には男の娘にもある「男なのにかわいい」の魅力がいっぱいだ。瑞樹は「自分は男だ」と主張しながらも容姿や仕草でかわいらしさを提供してきて、ギャップに心がくすぐられる。第6・7話では女の子の服を着なければいけなくなった瑞樹が、「男なのに……」と背徳感いっぱいの表情でフリルの付いた可憐なワンピース姿を披露。ごちそうさまでした。

 こうした魅力を感じられるのは、瑞樹が男だった事実をちゃんと読者に示してくれるから。第5話で瑞樹は、男子寮の共同浴場でほかの男子に体を洗われるというお色気シーンを見せながらも、話の終わり際に好きな女の子の写真にこっそりキスをする。そうそう、こいつかわいいけど本来は男なんだよね、としっかり思わせてくれるから、「男なのにかわいい」がしっかり成立するのだ。

 男の娘にせよTSFにせよ、こうした2つの性を同時に持つキャラには、単純にかわいい女の子・かっこいい男にはない特別な魅力を感じる心が、少なくとも日本人には原始的にある。

 日本では歴史上、男と女の2つの性を備えた“双性的”な人間に超人的・神聖なパワーを感じて神職につかせたというエピソードがいくつもある。日本人に女装人を愛する心があることを論じた新書『女装と日本人』(講談社)では、歌舞伎の女形などいろんな史実とともに、次の事例を紹介している。

 琉球王国では1605年にある男性の容姿が変わって女性に変身したので、神職の役人にしたという記録が残されている(著者はこの男性はもともとインターセックスで、途中から女性的な形質が強くなったのではと推測)。ほかにも1960年ごろ鹿児島県のトカラ列島・悪石島には女装のシャーマンが存在し、「女神が乗りうつった男性」という理由で女性のシャーマンよりも霊力が高いと恐れられていたそうだ。

 双性的な特性を持つ人は一般人と異なる、つまりは「人ではない存在に近い」≒「神」に近いという考え方があったと著者は指摘。現代ではさすがに「神」とまではいかなくても、こうした特別な感情は男の娘ブームの「男なのにかわいすぎる!」という興奮に近いものがあるだろう。

 現代のマンガでも、双性的なキャラが主人公の人気作品はけっこうある。高橋留美子の『らんま1/2』(小学館)は、水がかかると女になってしまう男子高校生が格闘家としてバトルや学校生活でコメディ劇を繰り広げる。奥浩哉の『変[HEN]』(集英社)は、美少女顔の男子高校生が不良の美男子に一目惚れされてしまうラブコディ。いずれもアニメ化され、名作として名高い作品だ。

 こうした背景からしても、ヒロインが双性的な魅力をばっちりふりまく『ボクガール』が好評なのもうなずける。ちなみに今週号も、ひょんな拍子に幼なじみの男友達に胸を掴まれて「…んっ!」と艶やかな表情を見せるハッピーな回でした。男なのにかわいいよー、単行本が出る前からおっかけるの、全然あり。
(文/黒木貴啓)

女装と日本人 (講談社現代新書)

女装と日本人 (講談社現代新書)

こんな可愛い子が女の子だなんて……。

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