腐女子ライターの「もう世の中BLにしか見えない!」第7回

『まど☆マギ』脚本家・虚淵玄が描いた“不幸で悲惨な男ばかり”の『Fate/zero』の世界に感じる“救ってあげたい願望”

2014.02.02

──アニメ見ても、少年マンガを読んでも、海外ドラマを見ても! 「もう世の中全部がBLにしか見えない」腐女子ライターによる、腐女子のための、コンテンツの“愛し方”。

テレビアニメ『Fate/zero』公式HPより。

 2014年秋にアニメ化が決定しているゲーム作品『Fate/zero』。今回は、その前日譚として、11年10月から12年6月まで放送された『Fate/zero』を紹介したい。

 日本の地方都市を舞台に、7組の魔術師(マスター)と、マスターが召還した英雄を使い魔(サーヴァント)として戦い、「聖杯」を奪い合うストーリー。原作は、『魔法少女まどか☆マギカ』の脚本家としても知られる虚淵玄だ。

『Fate/zero』が放送された時期には『うたのプリンスさまっ♪ マジLOVE1000%』も大ブレイクしていたが、うたプリのファンに中学生や高校生のティーンが多かったのに、対して『Fate/zero』には20代30代のファンが多かったのが印象深い。

 なぜ『Fate/zero』は大きなお姉さんの心を掴んだのか。

【ろくな最期じゃないからこそ腐女子の出番!】
 大きなお姉さんの心を掴んだのは「登場人物が全員不幸」ってことがあげられると思う。勝手に世界中の不幸を背負い込んだ不倫男に、慇懃無礼な“優雅”野郎、他人の不幸で飯がうまい歪んだ神父、許嫁をNTRされそうな嫌味な教師、そして片思いの女性のために勝手に命をかけて恨まれた童貞。これ全てマスター側だけの登場人物だが、まるで不幸の見本市のような有様。

 もちろん、ろくな人間がいないのだから最期も本当に悲惨。まともな死に方する人間なんてひとりもいない。(さすが虚淵!)でも、それぞれの正義だったりプライドだったりのために戦っていたので、どうしようもなく魅力的なのである。

 そこで私たち腐女子の出番である。

 魅力的な彼らがろくでもない最期を迎えるのなら、私たち腐女子が二次創作で幸せな人生を妄想してあげたい……! 『Fate/zero』は、夫や子どもなど本来守るべきものが何もない、そんな孤独な高齢腐女子の「誰かを守って救って幸せにしたい!」という心の隙間というか、供給にピッタリマッチするのである。

【一番不幸が一番萌える】
 私は特に、前述の“童貞”であるバーサーカー陣営の間桐雁夜にそんな庇護欲をかき立てられた。他の陣営は妻や家族や許嫁がいたり、サーバントと信頼関係を築いたりしているのに、雁夜だけは孤独だった……。片思いの女性はいけすかない野郎と結婚するし、命をかけて救おうとした少女には「バカな人」と見下されるし、サーバントは口も聞けないし……。人間関係的にも孤独だったし、彼自身の聖杯戦争に参加した理由すら、童貞の暴走ともいえる自己満足で精神的にも孤独だった。なんという孤独! なんという不幸! 最期は蟲み食われて死んだ彼を、私が二次創作で救わないで誰が彼を救えるの!? 私は高齢腐女子だから公式にも、二次創作にもお金使えるから! これであなたの幸せな未来を買うね!  と、孤独な高齢腐女子の母性を満たしてくれる大変救いがいのあるキャラクターなのである。

 私の二次創作の中では、雁夜は鎧を脱いだサーヴァント(ランスロット)とカップルになり、命がけで救った少女とも疑似家族みたいな関係をつくり、幸せになる……。雁夜はたいていの登場シーンで血反吐を吐いてるのだけど、そこが薄幸そうで守ってあげたいポイント。強化され理性を失ったサーヴァントであるランスロットの元ネタは『アーサー王物語』の元ネタに登場する騎士なので、強化がとければきっと雁夜のことを騎士道精神で守ってあげたいと思うはずなんだよね…。そして他のサーヴァントも英雄だけあって庇護欲強いはずだから、雁夜を取り合うはず。これで幸せになれるね、雁夜!
(にほちん)

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