クマと女子中学生がいちゃいちゃモフモフ 人気上昇中の『くまみこ』に人類が惹かれる理由

 もともとクマは、人間が「親しみ」と「畏怖」を同時にもつ魅力的な動物だ。雑誌「ユリイカ」(青土社)が2013年9月号で“クマ特集”を約200ページにわたって組むほど、その魅力は複雑で深い。

「クマの体型って人間の子どもに近い。だから子どもにとても人気があります」と、同誌にはある(中沢新一のトピック「クマよりもたらされしもの――根源をたどる足跡をめぐって」より)。クマが立ち上がったときの不完全さや腰の丸みが幼児的な無垢さを備えているとの指摘。確かにクマはなじみやすくかわいい。

 一方で、腰の丸みの不完全さは「人間を超える圧倒的なパワー」も持っているとも触れている。そう、クマはかわいいと同時に、ツメやキバで人間を殺せる強大な力もあって怖い。森の奥深くに住みながらも、時には畑に出てきて被害をもたらす。恵みを与えるとともにキバもむく、山や海といった自然に似た、両義的で神秘的な存在だという。アイヌ民族や北米先住民など、世界中の信仰や伝承でクマが畏れ多い生き物として登場するのも納得だ。

 こうしたなじみ深くもうかつに近づけないクマと親密になることを、喜び、楽しむ心が、人間には昔からある。「ユリイカ」には、ローマ帝政時代のローマでクマの曲芸が全盛期を迎え、人々が「人間と動物の通常の垣根が崩れるのを楽し」んだとある。19世紀にヨーロッパで作られたサーカスではクマが一番のスターだった。近代では先ほどのクマキャラに加え、テディベア、パディントンベアのように、人類はクマをキャラ化しては身近に置いて愛してきた。

『くまみこ』でもクマと人間が親密。リアルな描写や設定でクマ本来の「畏怖」らしさも備えたナツが、現代の女子中学生といちゃいちゃモフモフ絡みまくる。

 都会行きを反対されて怒ったまちは、ナツをおなかの上にのってポカスカ叩く。試練をクリアしたらいいよと許可され喜び、大きな首にもっふり抱きつく。クイズ対決をしたり、山でナツのおなかを枕にお昼寝したり……とにかくうらやましい。

 ナツとまちが家族のように絡む『くまみこ』は、親しみも畏怖もあるクマと人間がゼロ距離でおもいっきりデレまくるという、人間の大好物なファンタジーを現代風に描いた作品なのだ。重版された人気もうなずけるし、これから手に取る人もクマと人間のいろんな絡みあいに胸をときめかすこととなるだろう。
(文/黒木貴啓)

ユリイカ 2013年9月号 特集=クマ

ユリイカ 2013年9月号 特集=クマ

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