“飲む・打つ・買う”を描く作家――無頼漢・藤子不二雄A 幻の作品が半世紀後に甦った!

1401_kyojin_fujiko.jpg巨人の復讐(小学館)。こちらも初単行本化となる『はやぶさ号西へ行く』を併録。

「少年クラブ」(講談社)1957年10月号の付録として掲載された藤子不二雄Aのマンガ『巨人の復讐』(当時は藤子不二雄名義)が、本日1月16日に初の単行本として小学館から刊行された。

『巨人の復讐』は、50年以上前に雑誌の付録として付けられた作品で、しかもこれまで短編集などにも一切掲載されておらず、なかなか読めないものであった。ネットでは、この付録作品+ほか3冊の付録のセットが15万円で売り出されていたほどの幻の作品なのである。

 藤子不二雄Aといえば、『笑ゥせぇるすまん』(実業之日本社)や『魔太郎がくる!!』(秋田書店)といった、ブラックユーモアの描き手として知られるが、1960年代中盤までは、藤子不二雄名義で児童向けの作品を中心に描いている。そして本作『巨人の復讐』は、その後のブラックユーモア、怪奇ヒーローものといった作風の礎となった作品といわれている。

 そもそも、筆者が藤子不二雄A作品に惹かれるのは、作品からにじみ出る無頼な雰囲気だ。代表作のひとつでもある『プロゴルファー猿』(小学館)は、藤子氏自身のゴルフ好きが高じて誕生した作品だし、『狂人軍』(秋田書店)では、天下のプロ野球団・読売ジャイアンツをディスる(実在の選手をモデルにして侮辱しているため、この作品も未単行本化)。ブラックユーモア作品の主人公のほとんどは、麻雀、カジノ、ドボン(ブラックジャック)といったギャンブルに興じている。さらには女がストーリーに絡んでくるなど、“飲む・打つ・買う”といった“昭和の男”の生き様が描かれているのである。

 また、1970年代前後にはストーカーや引きこもり、社内失業といった、現代が抱える社会問題をテーマにした作品も描いており、その先見の明は唸らざるを得ない。2020年の東京オリンピックに備え、東京にカジノを作る計画が持ち上がっているが、これが実現したら、彼の作品に描かれているようなことが、実際に起きるのではないかと密かに期待している。

 ただ、作品のエピソードが現実となるのはいいとして、ヒトラーを敬愛するおじさんが近所で猛威を振るうというぶっ飛んだ『ひっとらぁ伯父サン』(小学館)や、気弱な男が生業として真面目にユスリをする『喝揚丸ユスリ商会』(講談社)みたいな展開は、自分とは離れたところで起きてほしいと切に願うばかりである。

 さて、件の『巨人の復讐』は、父親を何者かに襲撃された進ニ少年が、警察とともに捜査に乗り出し、人造人間の研究をする科学者フランケンシュタイン氏のもとへ行きつくというストーリー。そこには、もちろん巨人が登場するのだが……。

 半世紀以上の時を経て現代に甦った巨人は、我々にどんな問題を提起してくれるのか? もしくは、どんな男らしい生き様を見せてくれるのか? 藤子不二雄Aファンは必読である。
(文/高橋ダイスケ)

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巨人の復讐
作:藤子不二雄A
出版社:小学館
価格:1365円

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