『MH4』の地雷プレイヤー“ゆうた”氾濫が象徴するオンラインプレイの課題

2014.01.14

『モンスターハンター4』公式HP内「オンラインで遊ぶときのマナー」ページより。

 カプコンが誇る人気の狩猟アクションゲーム『モンスターハンター』シリーズ。最新作『モンスターハンター4』(以下 MH4)は任天堂ハードの3DS専用タイトルとして2013年9月に発売され、すでに400万本以上を出荷している。年末年始を挟み、クリスマスやお年玉需要も手伝い、今なお販売数を伸ばしている。さまざまな新要素を追加した『MH4』だが、目玉のひとつがオンラインプレイ機能の標準搭載。これにより、全国中のプレイヤーとも“狩り”を楽しめるようになったわけだが、同時に発売直後より、ネット上では「ゆうた」と呼ばれる地雷プレイヤーが問題視されるようになってきた。

“地雷プレイヤー”とは、ネットワークを使った協力プレイで迷惑な言動を繰り返す者のこと。『MH4』にもさまざまな地雷プレイヤーが存在し、改造データを平気でオンラインに持ち込む、ネットマナーをわきまえない幼稚な言動、とりわけプレイスキルが低い、ゲームシステムを理解していない……といった複合型の地雷プレイヤーを指して「ゆうた」と総称することが多い。

 最初の「ゆうた」が誰だったか定かではないが、オンライン接続時にも本名を入力するプレイヤー(本名の使用は推奨されておらず、低年齢層に多い)がいて、悪い意味で特に目立った者が「ゆうた」であったと推測される。やがて2ちゃんねるを中心に“『MH4』の地雷プレイヤー=ゆうた”との認識が広まり、まとめサイトなどを通じてネット上に拡散。いまやツイッターやYahoo!掲示板でも普通に見られる言葉になった。以前から『MH』シリーズでは、地雷ハンターを「ふんたー」と呼ぶならわしがあったが、それと並んで「ゆうた」も急速にネットスラングとしての地位を獲得してきた感がある。

 地雷の中でも特に言動が幼稚なプレイヤー「ゆうた」が目立ってきたのは、無料オンラインプレイの実装にくわえ、『MH』シリーズが3DSでリリースされていることと無関係ではあるまい。『MH4』のCEROレーティングがC(15歳以上対象)なのに対し、ゲームエイジ総研の調査によると3DSのユーザーは10~14歳のキッズ層が圧倒的に多数(外部参考記事)。オンラインショップのレビューを読んでも、小さな子供へ『MH4』を無自覚に買い与えて遊ばせている親が少なくない。お世辞にもCEROのレーティングが機能しているとはいえない状況なのだ。

 こうした中で、キッズ層のネットリテラシー向上にどうしても限界がある以上、地雷プレイヤー「ゆうた」の増殖を防ぐために期待されるのは、メーカー側の努力だろう。たとえば任天堂は、同社が手がける『MH』に並ぶ3DSの看板タイトル『ポケットモンスターX/Y』において、通信対戦を一方的に中止する“切断”といった悪質な違反行為に対し、システムレベルでペナルティを設けて地雷プレイの一部を抑止している。

 ただ、すべてのゲームメーカーが任天堂のように抜本的対応を行なえているわけでもない。カプコンは『MH4』の発売から約2カ月後、データ改造行為に対する公式の修正パッチを配布したが、かなりマイルドな修正にとどまった。結果、いまだオンラインプレイでは改造クエストのメンバー募集が貼られ、改造データによる装備をまとった「ゆうた」が闊歩している。改造以外の地雷行為に関しては野放しに近い。これはカプコンに限った話ではなく、オンラインプレイに対応した各社のタイトルにも同じような傾向が見られる。

 その背後には、仕様変更によるゲームバランスの調整や修正パッチの開発、サーバーの仕様変更にかかる各種コストに加え、グレーゾーンの行為まで厳しく締めつけすぎることでユーザー離れが進むのを避けたい心理など、メーカー側のさまざまな事情が透けて見える。

 今なお無数に出没し、罪のない一般プレイヤーに被害をおよぼす「ゆうた」たち……。こうした地雷プレイヤーが台頭する現状は、キッズ層にまでおよぶオンラインプレイ環境の急激な普及と、その対応に後手を踏まざるを得ないメーカー各社の苦悩を象徴しているといえるだろう。
(文/浜田六郎)

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