2万円ジョジョ画集の値引き販売は集英社の不誠実? Amazon炎上にある誤解

 今回の騒動の根本にあるのは、「完全受注生産」という言葉をめぐるすれ違いだ。

「完全受注生産」という言葉を多くのユーザーは、エンドユーザーが予約した分だけ作られると理解していただろう。だが、集英社側から見た「完全受注生産」は、正確には「(書店などの小売りからの)完全受注生産」を意味している。つまり、書店サイドがエンドユーザーからの予約数以上に発注を行い、店頭在庫として販売することも可能であり、実際、いくつかの店舗ではそれが行われていた。

 一般的な書籍であれば、問題はここまでで、「市場にダブついている」という結果だけで済むところだ。だが、今回の場合は、さらにちょっと複雑な商ルールが絡んでいる。

 一般的な書籍は、いわゆる再販制度のため、基本的に価格が下がることはない。その代わり、委託販売制度とセットになっており、書店は一定期間内なら売れなかった商品を出版社に返品することができる。

 だが「JOJOVELLER 完全限定版」は、扱い上書籍や雑誌ではないというカテゴリーに入っていた。こうした書籍カテゴリーから外れたアイテムは、ほかの小売業と同じように、委託ではなく書店が買い切る形で仕入れて、販売することになる。そして、売れ残った場合などは、書店が定価から値引きを行って販売することも可能なのだ。

 こうしたパターンは、実は今回の画集に限った話ではなく、コミックスの付録付き限定版などではよくあるパターン。実際、売れ残った限定版コミックスが、定価よりも大幅に安い価格で書店店頭に並んでいるのを目にすることもある。

 つまり、集英社としては公言どおり受注生産を行っただけなのだが、小売りサイドの期待値が高く、予約数以上の発注を行った、もしくは予想以上に予約キャンセルが出た結果、市場に在庫が並ぶことになり、それを書店側が損切りする形で値引き販売を行ったというのが、今回の騒動の全容というわけだ。

 書籍の流通、商ルールの複雑さなどもあって、ファンとのすれ違いを招いてしまった今回の画集だが、欲しい人が買えないといった事態を避けることができるのは受注生産のいいところ。値引き販売についても、“想定外の幸運”と受け止めるとよいのではないだろうか。
(文/小林聖)

JOJOVELLER完全限定版 (マルチメディア)

JOJOVELLER完全限定版 (マルチメディア)

要はAmazonで余ったから、売り叩いてるだけ。

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