紅白でももクロが活躍する一方、アイドルマンガの異端『ももプロZ』終了の危機!?

1312_momoproz.jpgももプロZ(講談社/小城徹也)1巻

 2年連続の『NHK紅白歌合戦』出場と、絶好調の人気アイドルグループ・ももいろクローバーZ。一方、ももクロの5人をキャラクター化した4コマギャグマンガ『ももプロZ』には試練が訪れている。掲載マンガ誌の「月刊少年ライバル」(共に講談社)が2014年6月発売の7月号で休刊になることが、今年の12月に発表されたのだ。

 雑誌の休刊はしょうがないとはいえ、同時に『ももプロZ』も消えてしまうのだとしたら惜しい。アイドルや芸能人を題材にしたマンガはこれまでひとつのジャンルとして築かれてきたが、『ももプロZ』はこうしたいわゆる「アイドル・芸能人マンガ」の枠を飛び越えた作品だからだ。

 普通アイドルや芸能人の作品化といえば、実際のエピソードをドキュメンタリー風に描くのが王道。モーニング娘。をマンガ化した作品『娘。物語―モーニング娘。オフィシャルストーリー』(講談社)は、加護亜衣や辻希美などのメンバーが困難を乗り越えた出来事を実録ものとして描いたものだった。ほかにも佐々木希のサクセスストーリーの裏側に迫る『Non stop days~シンデレラガール 佐々木希物語~』(集英社)も、秋田のショップ定員から人気モデルになっていく過程をマンガのエピソードで伝えるものだ。

 当事者の体験を物語として追うのは、リアリティがあって楽しみやすい。読者はモーニング娘。や佐々木希という存在を前提に、有名人の裏側を知って驚いたり、成功までの努力や挫折から感動や教訓を得たりする。

 対して2012年に連載が始まった『ももプロZ』は、ももクロのアイドルとしてのエピソードを追うどころか、そもそも作品内で彼女らの職業が違う。同作は、ももクロが「ももいろプロレスリングZ」に所属する女子プロレスラーという設定で、試合の裏側でハチャメチャなやりとりを繰り広げる日常系コメディマンガになっている。

 登場するのは暴走気味のバカキャラの百田夏菜子(赤)、マイペースで食いしん坊の玉井詩織(黄)、異次元の思考回路をもつ高城れに(紫)など。キャラの名前は本家と同姓同名、性格の特徴も本人に似せたものだ。本家にキャラだけ忠実な5人は、プロレスラーといってもほとんど試合せず、控え室や合宿所などでアホな絡みを4コマで展開する。

 さらに5人はキャラを保ちながらも本家を逸脱した言動で笑わせてくれる。かなこはトレーニングといって巨大鉄球を体で受け始め、勝手に自滅する。しおりんは談笑しながらカップ焼きそばを立ち食いしているのに周りからつっこまれない。れにちゃんはカメラの顔認識機能が反応するかどうか変顔していたら水木一郎の顔に変身。実在のアイドルがやるとは思えない行為にクスリとしてしまう。

 本家が経験してきた成功と挫折を描くのではなく、本家のキャラを壊さないまま想像上のコントをももクロにさせて笑わせる。ドキュメンタリー風ではなく二次創作。従来のアイドルマンガよりは、読売ジャイアンツのパロディギャグマンガ『ゴーゴー!ゴジラッ!!マツイくん』(小学館)で、ゴジラのあだ名を持つ松井秀喜が口から火を吐いたりするのに近い。

 実在アイドルからの二次創作要素が高いマンガはほかにも、AKB48を題材とした『AKB49~恋愛禁止条例~』(講談社)がある。架空の男性主人公がAKB48研究生として正式メンバーを目指すストーリーだ。前田敦子や大島優子など本物のAKB48メンバーもゲストっぽく登場して主人公にアドバイスするなど、こちらも二次創作要素が多いが、アドバイスにAKB48結成当初の出来事を用いたり前田敦子の卒業がストーリーに影響したりと、事実に基づいた作りとなっている。

 アイドルの事実ではなく、フィクションで読者を楽しませる作品が多くなってきたアイドルマンガ。『ももプロZ』は中でもとりわけ二次創作要素の高い、従来の方式から大きくはみ出している作品だ。プロレスラーとしての5人のコメディ劇は、掲載誌と共に消えてしまうのではなく、本家の活躍と一緒に見守り続けたいので、ぜひどこかで連載継続していただきたい。
(文/黒木貴啓)

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