『はだしのゲン』閉架騒動に『進撃の巨人』大ヒット……2013年のマンガニュースを振り返る

■『はだしのゲン』閲覧制限をめぐり議論
 松江市教育委員会が、広島への原爆を描いた『はだしのゲン』を子どもが自由に閲覧できない閉架図書にするよう要請したことが明らかになり、議論を呼んだ。

 国民的“トラウママンガ”ともいえる同作は、名作の呼び声が高く、この措置には大きな反発が起こった。同時に一部からは「閉架は妥当」という反論があったことも事実だ。歴史を物語化することは、どれほど注意深く描いても一定の史観を形作ることと一体になっている。ある意味では、表現をめぐる根源的な問題だったといえるだろう。

 閉架の妥当性についてはともかく、この問題をきっかけに『はだしのゲン』に改めて注目が集まり、例年の5倍にあたる1万部超の重版が決定。賛否を含め、名作が読み継がれていくひとつのきっかけとなったのは、案外喜ばしいことだったのかもしれない。

■『進撃の巨人』スピンオフまで大ヒット
 2013年、何といっても話題を呼んだのはこの作品。すでにアニメ化前の4月の段階で1200万部を突破していた怪物作品だが、アニメ化をきっかけにさらに大ヒット。12月の12巻発売時点で累計部数は2800万部と、倍以上になり、初版発行部数も220万部に達した。

 初版部数の国内記録を持つ『ONE PIECE』は初版405万部といまだ圧倒的な存在感と人気を誇っているが、『進撃の巨人』は連載開始からわずか4年ほどで、それに次ぐ初版発行部数を記録することになった。

 波及効果も恐るべきもので、スピンオフ『進撃の巨人 悔いなき選択』が掲載された雑誌「ARIA」2014年1月号は通常の5倍の部数を刷ったが、それでも緊急重版が決定。翌2月号は10倍まで部数を伸ばすことが決定した。

余談だが、『進撃の巨人』が初版220万部を達成した際、メディアで「(第1巻初版が)わずか4万部からスタートした」と表現されたことに対し、一部出版界隈では「4万部でわずか……」という悲しみの声が上がる一幕もあった。出版社によっても異なるが、新人作家の初版部数としては、1万部もあればまずは御の字というところで、4万部はかなり強気の数字のためだ。

 いずれにせよ、勢い的にも記録的にも新たな国民的ヒット作といえるレベルに達したといえるだろう。

■水木しげる、91歳にして大活躍
 マンガ界の大御所中の大御所・水木しげるが、今年8月小学館のウェブマンガサイト「やわらかスピリッツ」で新作読み切り『河童の三平 家の神』を発表。これで、紙芝居、貸本マンガ、月刊誌、週刊誌、ウェブマンガと、戦後マンガの全ジャンルで作品を描くという偉業を達成した。

 さらに水木は12月より「ビッグコミック」で新連載『わたしの日々』をスタート。91歳とすでにマンガ界の生き証人と呼べる年齢ながら、筆致もみずみずしく、現役作家として健在ぶりを見せつけた。まさに日本の誇る“妖怪”作家だ。2014年もますますのご活躍を期待したい。

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