『エバタのロック』レディー・ガガの肉ドレスを僕らはなぜ愛するか? ロックスターの必要性をギャグと熱い心で紐解く

『エバタのロック』レディー・ガガの肉ドレスを僕らはなぜ愛するか? ロックスターの必要性をギャグと熱い心で紐解くの画像1エバタのロック第1巻(小学館/室井大資)。

 今年11月の来日時、きゃりーぱみゅぱみゅのコスプレで見事に日本人の度肝を抜いてくれた世界的音楽アーティスト、レディー・ガガ。これまでほかにも生の牛肉でできたドレスを着たり、6つのプロペラを搭載した“空飛ぶドレス”で宙に浮いたりと、彼女は数々の奇抜なファッションで世を圧倒し続けてきた。

 彼女なりのメッセージが込められているとはいえ、冷静になってみると、どのパフォーマンスも「ちょっと待て」と突っ込みたくなるアホなもの。生肉を着るとか社会的に絶対おかしい……のに、どうしてあんなにガガは痛快でかっこよくて愛らしいのだろう。

 11月末に最終巻・4巻が発売されたばかりのギャグマンガ『エバタのロック』(小学館/室井大資)は、ガガのようなロックスター特有の「間違っているのにかっこいい」が度々登場する。

 同作は架空の大御所ロックスター・エバタのぶっとんだ生き様を、マネージャーや社長など、周囲の関係者のリアクションと一緒に目撃し、驚愕し、エネルギーをもらうマンガだ。

 第1話のコンサートライブ。満員のスタジアムの幕が開き、エバタはステージ上でテーブル席に座ってステーキ肉をほおばっている。「え、これ音楽ライブ?」といきなり読者の虚を突く。エバタが7分かけてステーキを食べ終え、いよいよ歌うかと思いきや、「みんなくつろいでくれ」と、今度はソファーに腰掛け、テレビで映画鑑賞を開始。こうした“客焦らし”のように、エバタは予想を無視したパフォーマンスをステージでも日常でもバンバン繰り広げる。

 そして、そんな暴挙にしっかり心の声で突っ込んでくれるのが、エバタのマネージャーとなる主人公・マサト。第3話でエバタがなんの説明もなしにステージ中央から頭だけ出して“ステージを着た”ときも、「わかり…づれ――ッ」と読者の気持ちを代弁してくれる。マサトを始め、エバタのスター性にほれ込む関係者たちが彼の破天荒ぶりに驚愕したり「ロックだぜぇ!」と興奮したりするので、読者は置いてけぼりを食らわず笑ってしまう。

 スターを笑いのタネにしておしまい、ではワイドショーと一緒だが、『エバタのロック』ではロックのすごさにハッとする瞬間が訪れる。

 第1話でエバタを初めて観たマサトは、自身の無茶ができないマジメな性格で、所属するロックバンドをクビになった直後だった。ステージのエバタを常識的に間違ってるとたしなめる反面、いつも突っ込まれるのを恐れてたしなめる側に回る自分にイラだつ。

 ファンが減る失敗も世間に笑われる恥も構わずに、やりたい放題するエバタ。「オレも一緒に間違えたい!」とマサトは心で叫ぶ。学校や職場など、周りの反応を恐れて我を通せなかった経験を持つ人なら強く共感できる思いだ。

 ロックスターの迷いのない行動にあこがれてスカッとする気持ちを、同作ではこうしてキャラクターが言葉にして汲み取ってくれる。特に最終巻の第5話、エバタは引退するかどうかの瀬戸際に立つ。そこでどん底の人間にとってのスターの必要性を説くマサトの言葉は、ガガの振り切った行動が僕らの“希望”であることも教えてくれる。
(文/黒木貴啓)

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