なぜ今さら『ジョジョ』が受賞? 贈賞理由も意味不明な文化庁メディア芸術祭に漂う終末感

 今回の『ジョジョリオン ―ジョジョの奇妙な冒険 Part8―』に対する贈賞理由を見ても、そうした意識はよくわかる。件の贈賞理由は「人気のエンターテインメント作品であるというだけでなく、マニエリスティックとも評される個性的なヴィジュアル」「人々を魅了し批評的な言説を含む豊かな語りに迎えられてきたシリーズの最新作である」などと書いてある。この時点でなにを言いたいのだか、よくわからない。とりあえず、後付けで学術風なことをいってみて「オレは作品の価値をわかっているぜ!」とでも言いたいのだろうか?

 だが、ここで批判されるべきは、受賞作品はもちろん、作品を選んだ審査委員でもない。審査委員には、マンガ家のすがやみつる氏、みなもと太郎氏も名を連ねている。すがや氏といえば、『ゲームセンターあらし』(小学館)で、荒唐無稽なゲームスタイル(次に使ったら死んでしまう必殺技とか)を考案し、当時の少年たちの心を掴んだ人物。みなもと氏は『風雲児たち』(リイド社)のような歴史マンガを描いたかと思えば、エロマンガにまで挑戦する人物である。どちらも、ジャンルを限定することなく幅広く作品を読む鑑賞眼もあるし、常に読者の目線でものを考えることのできる人物のはずだ。

 にもかかわらず、受賞した作品が「今さら」感を放っているのはなぜか? それは、これが国家の一機関である「文化庁」の与える賞だからだろう。たとえエポックをつくった大マンガ家であっても「国家」の「権威ある」賞であるがゆえに、国民が納得しそうな、それなりのものを選ばなくてはならないという呪縛からは逃れられないのだ。文化庁メディア芸術祭に限っていえば、妙な上から目線な雰囲気は「オレたちはマンガをよく読んでいる」だけではなく「関係者……特に国家の側に納得してもらわなきゃ」という空気も感じさせる。すがや氏もみなもと氏も人徳のある人物で知られているし、そのあたりを酌んだ上で犠牲になってくれたのだろうか?

 この受賞は「文化庁メディア芸術祭」、つまり「祭」で与えられるもの。神社の祭りの屋台に並ぶ「宇宙一よく当たるくじ引き(一等にファミコンとかが置いてある、アレ)」とかの類いと一緒だ。「あくまで祭りだ」と思って、楽しむのがよいかもしれない。
(文/矢師野 三寸)

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