かつてない最高峰、麻雀ミステリー!

『雀獄島』麻雀やらなきゃ殺されるクソ設定…と思いきや超一級サスペンスマンガ!!

 小説やマンガでは孤島を舞台にした物語が多々ある。例えば小説では綾辻行人氏のデビュー作『十角館の殺人』、マンガでは森恒二氏の『自殺島』などが挙げられる。サスペンスソリッドシチュエーションスリラー系では鉄板、悪く言えばベタ中のベタの舞台設定だ。

 ある意味使いづらいこの舞台設定に果敢に挑んだ作品が、『雀獄島』(じゃんごくとう)だ。この設定を使用した物語はかなりの数で、目新しくはなく、サスペンス系を好む読者を唸らせるには、よっぽど新しい要素を含ませなければならない。

 そこで『雀獄島』で採用されている付加要素が、作品タイトルで匂わせているように「麻雀」だ。「麻雀? 麻雀マンガなんてたくさんあるじゃん」と思う方も多いかと思われるが、単行本の帯には麻雀ミステリーとうたわれている。麻雀マンガと言えば、対局に重きを置いた『アカギ 〜闇に降り立った天才〜』『哲也~雀聖と呼ばれた男』などたくさんあるが、『雀獄島』での麻雀の扱いはあくまで謎を解き明かしていく1つの要素でしかない。物語のあらすじは以下のようなものだ。

 主人公・小野寺達也の運転する車がある男を轢いて事故を起こしてしまう。車は電柱に突き刺さり、自らも重症を負う。  次に小野寺が目を覚ました場所は、麻雀卓が設置された地下牢だった。そこには2人の男と1人の女。天井には監視カメラ。何者かが企画したゲームに巻き込まれ、死にたくなければ麻雀を打つしかないと教えられる。しかし小野寺は麻雀を打ったことがなかった。ルールも知らないので参加なんてできるはずがないと反発するも、あえなく参加を余儀なくされる。
 ところが参加してみると、小野寺は麻雀のルールを知っていた。いつどこで覚えたのか全く自分でも覚えていない。やがて激しい頭痛に襲われ、記憶にない記憶がフラッシュバックされるようになる。その記憶の中の自分は、手を真っ赤な血で染めていた。自分の体内に別の誰かが潜んでいるような違和感に襲われ始める。
 なぜ自分は地下牢に閉じ込められているのか? なぜ麻雀が打てるのか? 記憶にない記憶がなぜあるのか? 小野寺が轢き殺した男は誰だったのか? このゲームの首謀者は誰なのか?  全ての理由が明らかになったとき、対局の裏に隠されていた壮絶な復讐劇と悲劇が明らかになる――。


『雀獄島』のすごいところは、次々と明らかになっていく真実が、二転、三転どころか四転五転して予想を裏切り続け、読者を物語に引っ張り込んでいく点だ。全9話の1巻完結なので、展開もむだのないジェットコースターばりの突進力を見せる。散りばめられた伏線が回収されてはひっくり返される様は、お見事につきる。

 そして冒頭から突っ走ったジェットコースターに急ブレーキがかかるラストは、人間の尊厳についてまで踏み込んだ胸を打つシーンとなっている。ハッピーエンドかバッドエンドか、はたまたメリーバッドエンドか。読者によってその印象は違うだろう。筆者はメリーバッドエンドと理解した。

 ただ、ここまでほめ倒した同作品だが、ご都合主義の部分もなくはない。

 物語のキーマンに医者が出てくるのだが、その医者が「お前はブラック・ジャックかよ!」とつっこみたくなるほど神がかった手術をやってのけ、その手術が物語の鍵となっている。しかし、神がかった手術だったにも関わらずその描写は見開き半ページのみ。扱いが軽すぎるのだ。他の設定は全て筋が通っていたのだから、例え現実的に不可能な手術であっても、医学的な説明がもっとあっていいと感じた。それと、これはそもそもの話になってしまうのだが麻雀である理由がほとんどなかった。これが麻雀じゃなくて、例えば複数人でプレイするゲームであれば話を成立させることができる。最終話までいくと、もう麻雀は無関係となってしまうのだから。麻雀が選ばれたのは、単なる原作者の趣味だったのかもしれない。

 いずれにせよ一級のサスペンスとなっているのは間違いなく、江戸川乱歩賞受賞作品にあるような社会派ミステリー臭も感じられる。狭い地下牢で物語が進んでいくので話のスケールは、実際の乱歩賞作品には及ばないかもしれないが、ミステリー部分だけをみれば十二分に値していると思う。乱歩賞や横溝正史賞など、ミステリー小説好きにも胸を張っておすすめできる作品だ。
(文=Leoneko)

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