音楽的『ジョジョの奇妙な冒険』考察

「ノトーリアス・B.I.G」ら音楽的視点から考察する『ジョジョの奇妙な冒険』スタンドレビュー

 カトリックの教義に対して歌った曲が“It’s A Sin”である。カトリックの厳格なルールに対して、「アレもコレも罪だっていうなら、何もできやしない」と皮肉っている。それはまるでディオやその部下であるペット・ショップが世界を支配するために行ってきた理不尽な行動の数々の背景を代弁しているようにも聞こえてくる。つまり「崇高な理想のためなら犠牲は問わない。強者が世界を支配するべきだ」というディオの考えでは、人殺しも“Sin”ではない。そんなことに罪悪感を得ていたら、世界は変えられない……無駄無駄無駄、と言ったところか。

 対して、「そんな理不尽なことは許さん!」というのがジョースター一行の考えであり、宿敵ディオの本拠地であるエジプトを目指し、日本を出発したジョースター一行は、まさに「Go West」(PSBの代表曲。本来は楽園を目指す歌詞内容となっている)のテイを為し、ようやくの思いで、ディオの館前まで辿りつくのだ。そこで立ち塞がるのが、館に侵入しようとする者に“It’s A Sin”(それは罪だ!)とばかりに処断してくるのがペット・ショップというわけだ。

 立場が変われば正義も“Sin”も変わる。そんな互いの正義がぶつかり合う直前に起こったイギーvsペット・ショップ。ここで面白いのは、ペット・ショップを倒したイギーは、じつはディオのことなんてどうでもよく、無理矢理に連れてこられた立場ということだ。しかも、イギーのスタンド名は“ザ・フール(愚者)”。高尚な理念なんて知ろうともせず、自由気ままに生きてきた“愚者”が、使命に忠実に正義を実行するペット・ショップを打ち破る。

 ペット・ショップが敗れることによって、自己実現のための正義(=ディオの思想)がモラルとしては誤りで、結果それは“Sin”であったということにつながったことは、PSBも本望ではないだろうか。
(文/中西英雄)

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