「聖地巡礼」が商標登録されていた! その目的を登録企業に直撃!!

2013.12.07

「聖地巡礼」を商標登録した株式会社WCSの公式HPより。

「聖地巡礼が商標登録されている」

 そんな情報が編集部にもたらされた。オタク業界でも、既に一般名詞になっている用語が、突然商標登録されて「独占使用を企んでいるのか」と、問題化した事例は過去にも存在した。果たして今回も同様の事例なのか?

 特許庁のデータベースによれば「聖地巡礼」が出願されたのは昨年の8月。今年3月に登録となっている。権利を持っているのは、株式会社WCS。名古屋に所在する世界コスプレサミット運営事務局を務める企業である。世界コスプレサミットは2003年から毎年名古屋で開催されるイベント。世界からコスプレイヤーの集うこのイベントは、開催ごとに参加者・参加国を増やし、世界各国で予選会も開催されている。

 いわば、業界の事情はよくわかっている企業のハズ。そこが、世間が知れば炎上を招くような商標登録を行っている理由は、いったいなんなのか? 早速、話を聞いてみたところ、同社の代表取締役CEO・小栗徳丸氏は「そうした批判は想定していなかった」と語る。小栗氏は、商標登録を行った理由を次のように語る。

「弊社は、多くのスポンサー企業、公的機関ともビジネスを行っています。そうした事業の中で“聖地巡礼”という言葉を使う機会も増えています。そうした中で、もし誰かが商標登録を行い利用できなくなったら支障を来すのではないかという話もあり、商標登録を行うことにしました」

 小栗氏は、商標登録の目的はあくまで第三者が、先に商標登録を行い自社や関係企業・機関が利用できなくなるのを防ぐためだと説明する。

 この説明の通り、商標登録の範囲はかなり限定的だ。商標登録では権利の範囲が「商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務」で、定められる。この登録では「ゲーム機用プログラム」「新聞・雑誌を内容とする電子出版物」が入っているため、「DVDや、電子書籍で“聖地巡礼”という言葉が使えなくなるのではないか?」と考える人もいるかも知れないが、タイトルなどを商標登録して独占的な使用ができるのは新聞・雑誌などに限られる。念のため、特許庁にも確認したが「CDやDVD、電子出版物のタイトルには商標は認められません」との説明を受けた。

「他社が利用できなくなるとか、欲をかくつもりは、まったくありません」(前出の小栗氏)
 
 ひとまずは安心といったところだろうか。なお、今回「聖地巡礼」に詳しい複数の業界関係者にも話を聞いたが、誰もが一様に「オレが先に登録していればよかった」と悔しそうなセリフを吐いていた。こっちのほうが、よっぽど問題だよ……。
(取材・文/昼間 たかし)

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