“無料×アプリ”の勝算は? 新創刊「マンガボックス」は新たな市場を開拓できるか!?

2013.12.04

「マンガボックス」公式HPより。

 12月4日、ソーシャルゲーム大手として知られる株式会社DeNAが、アプリ形式の無料マンガ誌「マンガボックス」を創刊。同誌の編集長には、『金田一少年の事件簿』(講談社/天樹征丸名義)の原作などで知られる樹林伸氏を迎え、渋谷ヒカリエで記者発表を行うなど、鳴り物入りでの登場となった。

 マンガのウェブ展開は、この数年で一気に拡大。スクウェア・エニックスの「ガンガンONLINE」を皮切りに、小学館が「裏サンデー」「やわらかスピリッツ」、集英社が「となりのヤングジャンプ」(記事参照)、講談社が「モアイ」といった無料マンガサイトをオープンさせるなど、大手版元によるウェブマンガ誌の創刊ラッシュが続いている。さらに2013年には、集英社が「ジャンプLIVE」、講談社が「Dモーニング」といったアプリをリリースし、スマホ向けアプリ形式のマンガ雑誌という新形態が注目を集めるようになっていた。

「マンガボックス」は、こうした流れをハイブリッドで取り入れたマンガ誌といえる。配信形態は主にスマホ・タブレット用アプリではあるものの、基本有料の「Dモーニング」や一部有料パス制を取る「ジャンプLIVE」など、課金と組み合わせたモデルとは異なり、無料で全作品を閲覧することができる。また、PCからの閲覧も可能となっており、さまざまな端末からアクセスができるのも特徴のひとつだ。オリジナル作品を中心に掲載し、今後単行本や電子書籍を刊行していくことが予告されており、ビジネスモデルとしては無料で掲載、単行本でペイするという「ガンガンONLINE」をはじめとしたオーソドックスなウェブマンガの形態と予想される。

 また、DeNA自身が編集部を持ってオリジナル作品を制作していく一方で、講談社や小学館からのコンテンツ提供を受ける形となっている。その意味では、ウェブ系企業が版元とタッグアップしてプラットフォームを作っていく「ニコニコ静画」に近い性質も兼ね備えているといえるだろう。独自のユーザー層を抱えるウェブ系企業は、出版社が抱える従来の読者とは別のクラスタにリーチしやすい側面もあり、新たな市場開拓への期待もできるだろう。

 創刊時点では『金田一少年の事件簿』のスピンオフ『高遠少年の事件簿』や、『進撃の巨人』のスピンオフ4コマ『寸劇の巨人』など、28作品をラインナップ。既存モデルの「いいとこ取り」ともいえる「マンガボックス」は、ウェブマンガ界に風穴を開けられるか……? 今後の展開を注視していきたい。
(文/ネルヤ編集部)

■「マンガボックス」
https://www.mangabox.me/

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